2006年6月8日(木)「しんぶん赤旗」
障害者が施設利用断念
自立支援法2カ月
収入上回る料金
首相、調査の必要認める
井上議員質問
障害者のサービス利用に原則一割の応益負担をかす障害者自立支援法の実施後二カ月の実態が、日本共産党国会議員団の「障害者の全面参加と平等推進委員会」の調査で明らかになりました。全国二百三十余施設の無作為抽出調査によるもの。小池晃政策委員長(同委員会責任者)が七日記者会見し、調査結果と「障害者自立支援法実施二カ月―実態調査にもとづく緊急要求 利用者負担と施設経営の危機打開へ制度の抜本的改善を」を発表。井上哲士参院議員が同日、決算委員会で質問しました。
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井上議員は党の調査で浮き彫りになった全国の現場の悲惨な実態を突きつけて、原則一割の「応益負担」の廃止や政府による実態調査を求めました。
小泉純一郎首相は「実施から三カ月たっていない。すぐ見直すという段階ではない」と述べつつ、「苦情は来ている。さまざまな実態を含めて調査する必要がある」と認めました。
井上氏は調査の一例をパネル(表)で示しました。
調査では、身体・知的通所授産施設で働いている障害者は利用料が無料だったのに、四月から一万―三万円の利用料を支払っていることが判明。施設利用料負担が工賃収入を上回り、働く意欲をなくし、施設利用を断念した人が相次いでいます。
井上氏は「これでは自立破壊だ。自治体では八都府県、二百四十四市町村で独自の減免をしている。国の軽減措置が実態に合っていないことの裏返しだ」と指摘。福岡市で重度の障害者を介護していた母親が負担増を苦にして無理心中を図る事件が起きていることを挙げ、「実態調査と見直しは一刻も猶予ならない」と強調しました。
また、四月から施設の収入の基準となる報酬単価が引き下げられ、支払い方式が月額制から日額制に変わりました。職員の賃金引き下げ、正規職員をパート・アルバイトに置き換えることを余儀なくされる施設も出ています。
井上氏は、「『福祉は人』なのに、このままでは若い職員が確保できない。廃園せざるを得ない施設もある」と指摘し、「日本の障害者福祉の前途にとって憂うべき事態だ」と実態に見合う報酬単価の見直しを求めました。
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共産党が調査、緊急要求を発表
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共産党の調査には四十都道府県の二百十二施設・事業所から回答がありました。
同法では国の減免制度があっても所得制限などで対象にならない利用者が多く存在します。負担増のために施設利用を断念した障害者は六十五人、中止を検討中は百十一人に上っていました。
また施設・事業にたいする報酬単価が四月から引き下げられ、支払い方式が月額制から日額制に変更されたため、施設は前年度比で平均一―二割の減収になっています。「三割以上の減収」が六施設あり、「46%の減収」までありました。
すべての施設が「応益負担の撤回」か「減免制度の拡充」のいずれかを要望していました。
緊急要求では、(1)国の責任で応益負担導入にともなう実態を緊急調査(2)利用者負担の軽減措置を大幅に拡充(3)施設・事業所にたいする報酬を抜本的に改善する―を求めています。
会見で小池氏は、「障害者に大きな被害が出ており国の責任で実態調査をする必要がある。さらに施設も深刻な状況にある。応益負担を撤回するとともに、当面減免制度を大幅に拡充し、一体のものとして報酬単価を改善するべきだ」とのべました。記者会見には高橋千鶴子衆院議員・同委事務局長が同席しました。