2006年6月4日(日)「しんぶん赤旗」

主張

ドイツW杯

フェアプレーと友情に満ちて


 いよいよ九日からサッカーのワールドカップ(W杯)ドイツ大会が始まります。

 世界を六つのゾーンで分け、長期間にわたるきびしい予選を勝ち抜いた代表三十二チームが、一カ月間にわたって、地球儀を抱いた黄金色に輝く優勝杯をめざします。

“32色”を楽しみに

 サッカーの魅力は、なんといってもパワーとスピードあふれるプレーです。その最高峰がW杯大会であり、世界の人びとの目がフィールドの攻防にくぎ付けにされるでしょう。

 楽しみなのが、“三十二色”のサッカーが見られることです。ボールさばきも、プレースタイルも、それぞれに色合いが違います。その人間模様の多彩さと豊かさを存分に堪能したいと思います。

 連覇をねらうブラジルや、地元ドイツなど実力伯仲のヨーロッパ勢に注目が集まっています。次回大会の南アフリカ開催で弾んでいるのがアフリカ勢です。日本、韓国、イラン、サウジアラビアのアジア代表がどう食い込むか、興味がつきません。

 三大会連続出場の日本は、前回は開催地の利も手伝ってベスト16に入りました。その真の実力が“アウエー”で試されます。「ピッチ(フィールド)の中の自由」を選手に求めてきたジーコ監督のもとで、どれほど進化しているのかも見ものです。

 「今までに身に付けたものを最高の準備をして最高の状態で発揮して、最高の喜びを味わいたい」(ゴールキーパー川口能活選手)。まず、初戦のオーストラリア戦(十二日)に万全を期して挑むことです。

 気になるのが、マスメディアの報道姿勢です。まるでサッカーの試合を、国家間の争いかのように仕立てて、「日の丸を背負うサムライ集団」などとあおっています。なかには、「日の丸」「サムライ」「大和魂」などをことさらに絶叫して、「これはスポーツ報道なのか」と疑いたくなるものもあります。

 国別対抗の試合方式をとっているW杯大会ですから、自国のチームや選手の活躍を期待し応援するのは自然な感情です。同時に、開催の根本精神は、サッカーを通じた世界の人びととの友好と相互理解の促進です。世界の人びとが交わるW杯の舞台は、「世界の中の日本」を知り、理解を広げる、絶好の機会といえるでしょう。そこを大事にして、ぜひ日本チームの試合では、選手の活躍を大いに応援するとともに、相手の健闘をもたたえ心を通わせたいものです。

 開幕直前になって騒然としてきているのが、イタリアのプロサッカー・セリエAで発覚した審判の買収や八百長問題です。波紋は広がるばかりで、他のヨーロッパの代表選手にまで影響がおよびかねないなりゆきです。これでは、主催者の国際サッカー連盟(FIFA)が掲げる「フェアプレーの旗の下に」との看板も泣いてしまいます。「不正、ルール違反まがいの行為、ドーピング、暴力の行使…を排除する」(「ヨーロッパ・スポーツ倫理綱領」一九九二年採択)とのフェアプレー精神を思い起こして、今大会がその手本になることをFIFAに望みます。

梅雨空を晴らす奮闘を

 ドイツとの親善試合で上々の仕上がりをみせた日本チームだけに、実力の評判も上昇中です。真夜中のテレビ観戦で寝不足の日が続きそうですが、梅雨の重たい気分をはらす胸のすく活躍を見たいものです。

 ドイツ・ワールドカップがスポーツの友情に満ちた大会となることを期待して――。


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