2006年6月3日(土)「しんぶん赤旗」
米兵に無期懲役
横須賀女性強殺 激烈な暴行
横浜地裁 「基地周辺住民に衝撃」
神奈川県横須賀市で今年一月、会社員の佐藤好重さん(56)=当時=を殺害、現金を奪ったとして強盗殺人の罪に問われていた米空母キティホーク上等水兵のリース・ジュニア・ウィリアム・オリバー被告(22)に対する判決公判が二日、横浜地裁で開かれ、小倉正三裁判長は求刑通りの無期懲役を言い渡しました。
小倉裁判長は「被害者が身動きできず、声も発しない状態になるまで約十分間も暴行を続けるなど残忍極まりなく、冷酷非道な犯行」と非難。その上で「現役の米軍兵士による凶悪犯罪として、基地のある地域住民に多大な不安と強い衝撃を与えた責任は重大」として求刑通りの無期懲役を言い渡しました。
リース被告は公判で「両替を頼むつもりだった」などと釈明。しかし同裁判長は「飲酒などの遊興で所持金が乏しくなり、現金を奪うことを考え、泣き叫ぶ被害者に対し異常とも言える激烈な暴行を加えて殺害した犯行は、あまりに自己中心的で身勝手極まりなく人命軽視も甚だしい」と強盗目的と認定しました。
判決によると同被告は一月三日、米海軍横須賀基地近くの路上で、佐藤好重さんに「すみません」などと声をかけ、道を尋ねるふりをして佐藤さんのバッグを奪いとろうとしました。
抵抗する佐藤さんの顔面を手で殴打、近くのビルに引きずり込み、さらに暴行を加えました。殺害後、佐藤さんのバッグから持ち去った現金一万五千円は同日中に風俗店での遊興や飲酒に使いました。
解説
裁かれた米軍
米兵による佐藤好重さん殺害事件裁判は初公判から二カ月半という異例の速さの判決でした。
佐藤さんの実弟、真田修一さんも判決後の会見などで「被告の身柄も起訴前に引き渡され、審理も二回で判決です。この背景に原子力空母配備問題を感じる。空母司令官や乗組員らが葬儀に参列したり、街でゴミ拾いするなど世論向けの動きもあった」といいます。
リース被告による強盗殺人事件の直前に八王子市内でも米海軍の水兵がひき逃げ事件を起こしました。米軍の「公務中」という通告で警視庁が逮捕した米兵を米軍に引き渡すという事態に世論は強く反発しました。
米軍再編による基地強化に反対する自治体ぐるみの運動がかつてない規模で広がっています。横須賀でも新たな原子力空母配備問題で大きくゆれています。こうした時期に起きたのが今回の「残忍で冷酷非道な犯行」(判決)でした。
判決が「現役の米軍兵士」「基地のある地域住民に多大の不安と強い衝撃を与えた」とあえて言及した意味は軽くありません。
真田さんら遺族を激励、同裁判を見守ってきた横浜市の米軍機墜落事故の被害者、椎葉寅生さん(68)は「この判決は被告だけを裁いたものではない。米軍も裁かれている。米軍と日本政府は判決を重く受けとめるべきだ」と言います。(山本眞直)