2006年6月3日(土)「しんぶん赤旗」

いま地方で

出産できる病院ない

復活求め多くの団体が共同

山あいの家を訪ね署名

広島 庄原市


 広島県北部の庄原市は人口約四万四千人。面積は約千二百五十平方キロで県内最大です。同市で昨年四月、出産可能な医療機関がなくなりました。市民が「庄原市の出産医療の再開を求める市民の会」をつくり、復活に向けて取り組みを始めています。(佐藤恭輔)


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 市内でただ一つの出産できる医療施設だった庄原赤十字病院では、年間約二百人が出産していました。うち約四分の一は「里帰り出産」。隣接する岡山県から通っていた人もいるなど、周辺地域の出産医療も支えていました。

1時間弱かかる

 同院の常勤産婦人科医が昨年三月に定年を迎えた際、後任を確保することができず、翌月から産科を休止しました。現在は広島大学から派遣を受け、昨年退職した医師も加わり週二回の診療・検診を行っています。出産には隣の三次(みよし)市まで行かなくてはなりません。

 庄原市東部の西城に住む女性は昨年四月、第四子を三次市で出産しました。「赤十字病院までなら車で約三十分ですが、三次までだと一時間弱かかります。陣痛がきてからでは間に合わないかも、と不安がありました」と話します。積雪時にはさらに時間がかかります。

 庄原赤十字病院では、広島大学に常勤の産婦人科医の派遣を要請していましたが、実現しませんでした。同院の清水孝昌事務部長は「産婦人科医は二十四時間三百六十五日対応を求められ、仕事は非常に過酷です。医療紛争のリスクも高い。産婦人科医そのものが少ない」といいます。出産医療再開には「最低でも二人以上」が必要になります。

 「一病院、一地方の話ではなく、国の医療政策の問題です。国策でやらなければ、ほかでもこういう話がもっともっと出てくると思います」

 二〇〇四年度から二年間の臨床研修制度が始まりましたが、研修後大学に戻る人が少なく、大学側が医師を派遣できずに離島や中山間地域で医師不足が広がっています。

全市民的に広げ

 昨年十一月、「庄原市の出産医療の再開を求める市民の会」が結成されました。同会には市自治振興区連合協議会長、市女性連合会長、労働組合、日本共産党市議や保守系市議など幅広く参加しています。

 同会は署名行動に取り組み、街頭で訴えたときには二日間で約九百人が署名しました。山あいの家を一軒一軒訪ね歩くなど、現在までに市人口の四分の一を超える約一万三千人分が集まっています。今年はじめには藤田雄山知事に署名を携え要請しました。

 滝口季彦市長は三月議会で、これまで同様「一日も早い出産医療再開に向け取り組む」と表明。病院と連携し、引き続き広大への協力を依頼すると同時に、県や国にも具体的な支援策を求めるとしています。

 同会の小笠原洋行代表は「設備や人員の態勢があるうちに医師を確保できなければ、将来にわたって庄原で出産医療ができなくなるかもしれません。全市民的な取り組みにしていきたい」。

 日本共産党の藤木くにあき市議は再開を求め議会で何度も取り上げてきました。「関係機関に市民の願いを届け、医師の理解・協力を得て、早期再開を目指したい」


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