2006年5月31日(水)「しんぶん赤旗」

元教諭に罰金20万円

「君が代」強制批判 「不当」と控訴

東京地裁判決


 東京都立板橋高校の卒業式で「君が代」強制を批判する発言をし、威力業務妨害罪に問われた同校元教諭の藤田勝久さん(65)に対する判決公判が三十日、東京地裁で開かれました。村瀬均裁判長は、藤田さんの行為は「卒業式の厳粛かつ円滑な遂行を妨げる恐れがあり、実際に開式が二分遅れた」として罰金二十万円の判決を言い渡しました。藤田さんは不当な判決だとして控訴しました。

 この裁判は二〇〇四年三月の板橋高校の卒業式に来賓の藤田さんが式を妨害したとして起訴されたもの。藤田さんは開式前に会場でビラを配布し、保護者席に向けて「国歌斉唱のとき教職員は立って歌わなければ処分されます。ご理解願ってできたら着席をお願いします」と訴えました。

 検察側は、藤田さんが同校の教頭の制止にもかかわらずビラを配布し、大声で演説して式を混乱させ、開式を遅らせたとし、懲役八カ月を求刑していました。

 弁護側は、保護者への藤田さんの語りかけは憲法が保障する表現行為であり、開式前に出席者が自由に過ごしている時間帯に平穏におこなわれ、発言を終えるまでだれも制止していなかったと主張。式を妨害した事実はなく、事件は「日の丸・君が代」強制に反対する言論を弾圧するための「でっち上げ」であると訴えていました。

 判決は、検察側の主張をほぼ全面的に認めたうえで、藤田さんの行為は式の妨害を直接の目的にしておらず、開式の遅れもわずかであるため罰金刑が相当だとしました。

 判決後の会見で藤田さんは「卒業式の参加者に聞いてもらえば判決が間違っているとわかる。偽証を事実と認定している。体制を守るために無理をした判決だ」と語りました。


“言論の自由を圧殺”

弁護団が抗議声明

 「これでは行政に批判的な言動はすべて犯罪にされてしまう」―。板橋高校元教諭の藤田勝久さんを東京地裁が有罪としたことに対し、判決後の報告集会に集まった支援者や弁護団の間に驚きと怒りが広がりました。

 判決は藤田さんが保護者席に向かって「君が代」強制に反対する発言をしたこと自体が「威力」にあたるとしました。参加者からは「言論の自由をあまりにも軽く扱った判決だ」との声が出ました。

 裁判では同校の教員、保護者、卒業生ら八人が弁護側の証人として出廷。ビラの配布や保護者への発言が平穏におこなわれ、だれも制止していなかったことを証言しました。しかし、判決は当時の教頭の証言を一方的に事実と認定しました。

 集会では「最初から有罪ありきの判決」「証言の都合のいいところだけ使っている」などの批判が相次ぎました。公判で証言に立った男性は「なぜ裁判所は(偽証を)見破れないのか」と語りました。

 加藤文也弁護士は「藤田さんはほんのわずかな時間保護者に語りかけただけ。なんでこんなことが犯罪になるのか。ビラ配布制止がなかったことは十分立証できたはずだ。裁判所は有罪にするために教頭の証言を採用したのではないか」と語りました。

 弁護団は「恣意(しい)的かつ政治的な不当判決」であり、頻発しているビラ配布弾圧事件と同様に「言論・表現の自由」への圧殺効果は計り知れないとする抗議声明を発表。控訴審で無罪を勝ち取る決意を表明しました。藤田さんは「都は憲法無視の暴走を続けている。日本がファシズム、全体主義にならないようつとめたい」と語りました。


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