2006年5月31日(水)「しんぶん赤旗」
米軍再編 閣議決定
地元無視で矛盾激化
政府が在日米軍再編の基本方針を閣議決定したことに対して、関係自治体から「極めて遺憾」(沖縄県・稲嶺恵一知事)などと強い批判の声が上がっています。
防衛庁と沖縄県が十一日に交わした「在沖米軍再編に係る基本確認書」には、「閣議決定を行う際には…沖縄県、名護市及び関係地方公共団体と事前にその内容について、協議することに合意する」と明記されていました。
しかし、政府は六月下旬の首相訪米の“手土産”作りのため、沖縄県とも名護市とも事前の協議を行わず、目標としていた「五月中の閣議決定」(額賀福志郎防衛庁長官)を強行したのです。
米軍再編計画を「速やかに、かつ、徹底して実施」(米軍再編「最終報告」)するという日米合意を最優先し、自治体との約束は平気で破る―。政府の強権的な姿勢を改めて示しました。
新たな負担当然視
政府は米軍再編の目的として、「抑止力の維持」と同時に沖縄県をはじめ「地元負担の軽減」を挙げてきました。しかし、沖縄にとっては、「負担軽減」どころか、普天間基地に代わるV字形滑走路の新基地建設など、より一層の負担が押しつけられます。
一方で今回の基本方針では、「日米安全保障体制を維持・発展させていく」として、米軍の地球規模の先制攻撃態勢の一端を担うという姿勢を鮮明にしています。
基本方針は、具体的な再編計画を列挙した上で「再編関連措置を実施する際に、地元地方公共団体において新たな負担を伴うもの」があることを明記しました。
「地元負担の軽減」どころか、日米同盟強化のための地元負担の増大を当然視しています。
歴史的にも国際的にも例のない在沖縄海兵隊のグアム移転費など、総額三兆円の再編経費負担を含め、国民に説明できないことを実行しようとしていることも、基本方針の閣議決定を強行した背景の一つです。
V字 明記できず
今回の閣議決定に伴い、米海兵隊普天間基地(沖縄県宜野湾市)の「移転」先を、名護市辺野古沖とした閣議決定(一九九九年十二月)は廃止されました。
これで、沖縄県内での米軍基地たらい回しを定めたSACO(沖縄に関する日米特別行動委員会)路線の破たんが確定しました。
にもかかわらず、在日米軍再編「最終報告」では、基地機能や住民生活への影響のいずれも辺野古沖案を上回る「V字形」案を明記し、基本方針でも、同案を基本とすると明記しました。
しかし、政府は当初、「V字形」案を具体的に明記した「別紙」を基本方針に加えようとしたものの、沖縄県民の反発が強く、断念に追い込まれました。沖縄県民や全国各地の住民・自治体との矛盾はすでに激化しています。(竹下 岳)
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