2006年5月29日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

格差社会のもと 給食代は


 小泉政治五年間に貧困と社会的格差が広がり、子どもたちの学校生活にも、その影響がおよんでいます。その一つ、学校給食代の問題について、四月から小学生の給食代全額公費負担をうちだした北海道三笠市と、給食代滞納者へのゆきすぎた対応が批判を呼んだ山梨県笛吹市の二つの例を見ました。


4月から小学生は全員無料

北海道・三笠市

 北海道三笠市は、今年度から小学生の給食代全額公費負担をうちだし、四月から実施しました。

炭鉱閉山後きびしい条件で

 炭鉱閉山後、企業も少なく、きびしい条件のもと働いている父母が増えて、とも働きでやっと生活が成り立っています。それだけに、今回の給食代無料化で、市内の小学校六校、三百七十四人の子どもたち全員がそろっておいしく給食が食べられるようになったことは、父母たちから喜ばれています。

 生活保護、準保護世帯の子どもの給食代はこれまでも国から支給されています。新たに少子化対策支援事業として、小学生の給食代を公費で負担するための予算は千二百三十万四千円です。

 教育費の父母負担軽減は、これまでから要望されていたことで、新日本婦人の会三笠支部でも、「教育費の父母負担軽減、学校給食に地場もの食材を」という運動にとりくむなどしてきました。

 私たちのまちは、一八八二年(明治十五年)に小樽の手宮―幌内間に石炭輸送のための鉄道が開通し、最盛期は大手北炭系三山、住友系二山の炭鉱でにぎわった町です。ところが最後まで残った幌内炭鉱も一九八九年に閉山。人口は減り、一時は約六万三千人だったのがいまは一万二千人。六十五歳以上の高齢者が37%です。若い人が少なく、子どもの出生率も少なくて、一年間に五十人ほどの赤ちゃんの誕生にとどまっています。

 このため、行政は閉山対策と地域振興開発に力を入れ、各種のイベント企画を売り込む企業に手をだしました。そのうちの一つが、道内鉄道発祥の地を理由に二十数億円をかけた鉄道村の建設開業です。

 来訪者は当初計画で年間十六万人を見込んだものの、二〇〇三年で入村者五万五千人、入館者五千四百人にとどまりました。十数億円の投資も無駄になったといわれる状態です。

 「老人の福祉、年金、医療その他の予算を削減して、無駄遣いするのでなく、老い先短い老人世帯のために先にやってほしいことがあるのでないか」という声もあります。

少子化対策さらにすすめて

 小学生をもつ母親からは「子どもの給食代が無料になったのはたいへんうれしい。さらにもう一歩少子化対策をすすめてほしい」という声が多数あります。「やるのなら中学生の給食も無料にしてほしい」という声とともに、「悪いことではないが、やる前にもっと市民の意見を聞いてほしい」との声もよせられています。

 (日本共産党市議岩崎 賢治)


「2カ月分滞納なら停止に」

山梨・笛吹市

 「二カ月に渡り給食費を滞納した場合には、翌月から弁当を持参させますので、給食を停止してください」…。三月下旬、保護者に代わって給食費を支払うとの保証人まで記入する内容の「給食申込書」が、山梨県笛吹市立石和(いさわ)中学校と、同石和南小学校で配られました。

がくぜんとした 市民が投書

 「一市民としてがくぜんとした。貧しい家の子は学校に来るなと言っているのと同じではないか」―。滞納で給食停止の通知が出されたことを知った四十代の男性が「山梨日日新聞」に送った投書です。

 通知を見た母親から相談を受けた新日本婦人の会石和支部が、亀山和子党笛吹市議らとともに、「どの子にも等しく給食を提供する」ことを求めた要望書を市の教育委員会に提出したことをきっかけに、「しんぶん赤旗」が報道、地元の新聞やテレビも相次いで取り上げました。

 「山梨日日新聞」の投書欄には、その後も学校がとった措置への賛否が続き、市教育長の「健全な給食運営のための苦渋の選択」との「回答」が掲載されました。

 旧石和町は、一九六一年に突然わき出た温泉で全国に知られた観光地ですが、長引く不況で観光客も減り、かつてのにぎわいはありません。

 同町内に住む亀山市議は「ホテルなど観光業で働いていた人たちのリストラ、転職は数多く聞いてきた。払いたくても払えない親が増えていることは容易に予想できます。こうした時こそ行政が手をさしのべるべきなのに」と怒ります。

みんなと一緒に食べたいのに

 こうした市民の批判や抗議を受け、ようやく市の教育委員会は「ゆきすぎがあった」「若干、配慮に欠けていた面もあった」として四月二十五日の市議会で、小学校の新一年生については停止措置をとらないことを表明しました。

 しかし、小学校二年生以上と中学校三学年の「停止措置」は続ける意向で、「払えないという家庭へのきめ細かい援助の努力は続けるが、通知の撤回はしない」(高野あけみ同市教育次長)としています。

 新日本婦人の会県本部は「みんなと一緒に給食を食べられない子どものことを考えてほしい」と、県教委や文部科学省に「撤回」の指導を求めて運動を広げました。同県本部の豊木桂子事務局長は「払わない親の応援ではなく、『つらいのは子ども』『義務教育の現場でこんなことがあっていいのか』の立場で訴えてきました。小泉内閣の弱肉強食の政治が教育現場にまできたとの思いです」と話します。

 亀山市議は「給食は学校教育の一環であり『申込書』をとること自体がおかしい話です。就学援助制度の拡充とともに、在校生全体で通知と給食申込書が撤回されるよう今後も努力したい」と話しています。

(山梨県・志村 清)


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