2006年5月29日(月)「しんぶん赤旗」
たび重なる戦争で 経済悪化
200万人が夫亡くす
イラク
【カイロ=松本眞志】イラクでは、度重なる戦争、治安の悪化と困難な経済悪化が原因で、夫を亡くした女性や未婚の女性の増大が社会問題となっています。
汎アラブ紙アッシャルク・アルアウサト二十五日付によると、イラクの女性団体「イラキアット(イラクの女性)」は、イラク全土で夫を亡くした女性が二百万人以上、首都バグダッドでは約四十万人いると報告しています。
イラキアットの報告は、イラン・イラク戦争、湾岸戦争、イラク戦争の三つの戦争とその後の暴力やテロがこの問題の背景にあると分析し、最近の数カ月間で夫を失った女性が連日、九十―百人ずつ増えているとしています。同紙は「調査の結果はイラク社会における否定的な現象を示すものだ」と警告しています。
イラク紙アルラフィダイン二十日付は、「未婚女性―イラクの家庭の現実」と題する論評で、イラクでは、治安の悪化や困難な経済状態が雇用問題や収入に影響を与え、若い男性が結婚をためらい、他の働き口や安全な場所を求めて国外に脱出する事態が生まれていると述べています。同論評は、この結果、自立が困難で社会的に弱い立場にある女性がその犠牲になっているとしています。
同紙は、数千人の規模で結婚を控えていた男性がテロや暴力の犠牲になっていることも未婚女性の増加の背景にあると指摘しています。
同紙はさらに、婚期を過ぎた女性は「身体的、精神的に障害がある」という社会的偏見があると述べています。バグダッド大学のナディヤ・マハウィリ教授(社会学)は「女性の晩婚は正常な女性の成長を妨げる重要な社会問題として考慮されるべきだ。若い男性は、失業の増大や結婚によって生じる責任の重さのために結婚することが困難だと思っている」との見解を紹介しています。