2006年5月28日(日)「しんぶん赤旗」
主張
「行革」関連法
利益第一主義の「総仕上げ」
「行革」関連法が自民、公明などの賛成多数で成立しました。
関連法のうち、「行革」推進法は生活に身近な分野の公務員の大幅削減や、中小企業向け政策金融の縮小を盛り込んでいます。公共サービスを入札にかける「市場化テスト」法では、民間企業のビジネスチャンスの拡大を狙っています。
関連企業は「百年に一度、五十兆円のチャンス」だと色めきたっています。
ビジネスチャンス
ビジネスチャンスをつくり、分配するやり方は露骨です。
例えば、国家公務員を五年間で5%以上純減させる具体策を検討している「行政減量・効率化有識者会議」の座長は、大手警備会社セコムの飯田亮・取締役最高顧問です。
この会議は刑務所の建設を含む包括的な民間委託の推進を提言しています。セコムは刑務所事業への参入に力を入れ、山口・美祢(みね)市の刑務所の建設・運営を受注しています。
政策決定にかかわる会議のトップに利害関係者をすえるのは「お手盛り」にほかなりません。同様の「お手盛り」は、規制改革会議、国家公務員宿舎の移転・跡地利用を審議する「有識者会議」など、小泉「構造改革」の中にまん延しています。
「行革」関連法は「改革の総仕上げ」と小泉内閣は言います。その「改革」がもたらした深刻な被害とゆがみが耐震偽装、ライブドアなどの社会的事件や、貧困と格差の拡大によって次々と露呈しています。
「官から民へ」「改革なくして成長なし」「努力したものが報われる社会」―。こうした宣伝文句の陰で実際に進められてきたのは、大企業・大資産家に大もうけの「自由」を保障することです。
「官から民へ」の代表が「行革」関連法だとするなら、「改革なくして成長なし」の代表は財界要求に基づく雇用の規制緩和です。
小泉内閣は契約社員の雇用期間の上限を緩め、労働者派遣の製造業務への解禁、派遣期間の制限も緩和しました。労働時間の規制も、サービス残業を合法化する裁量労働制をホワイトカラー(事務労働者)全体に導入できるよう緩和しました。
政権発足前の二〇〇〇年と比べると〇五年の派遣社員は三・二倍に、契約社員や嘱託等は二・五倍化し、合わせて三百二十万人も増えています。この間の非正規雇用の増加数(三百七十六万人)の85%が小泉内閣の規制緩和に関連しています。
企業が非正社員を雇う最大の理由は「賃金の節約」です。民間企業の給与総額は二〇〇〇年からの四年で十五兆円も減りました。身勝手なリストラ人減らしと、正社員を非正規雇用に置き換えた「効果」です。
働くものから吸い上げた「賃金の節約」が、上場企業の空前の利益の源泉となっています。
具体化やめさせよう
大企業の利益第一主義の「自由」の拡大は、低賃金と長時間労働がはびこる勤労の「不自由」を広げました。いくつ会社を回ってもどこにも本採用されない、いくら頑張っても若者の半数が正社員になれない、いつリストラされるか分からないような社会―。「構造改革」は、日本社会を「努力するものが報われる社会」の対極に向かわせています。
公共サービスと公務員を標的にした「行革」関連法は、利益第一主義を社会の隅々に広げる「総仕上げ」です。その具体化を押しとどめるたたかいを、国、地方のあらゆる分野で強めていこうではありませんか。