2006年5月27日(土)「しんぶん赤旗」
石綿被害 国に不作為
被害住民が賠償請求
大阪地裁 全国初の集団訴訟
国は石綿によって重大な健康被害が生じることを知りながら、有効な法規制も行政指導もおこなわず被害を拡大させたとして、大阪府南部の泉南地域に集積していた石綿工場の元従業員や近隣住民ら八人(故人三人)が二十六日、国の不作為の責任を追及して、総額二億四千四百二十万円の損害賠償請求訴訟を大阪地方裁判所に起こしました。
石綿による健康被害で国を相手取った集団訴訟としては全国初めてです。
提訴後の記者会見で原告らは「国は戦前から泉南地域を調査し、石綿が健康被害を起こすことを知っていたのに、何もしなかった。国の不作為を許せない。国が過ちを認めるまで、責任を突き詰めていきたい」と決意をのべました。
原告の南和子さん(63)の父、寛三さんは昨年二月、石綿肺で十三年間苦しみ抜いた末に亡くなりました。泉南市の石綿工場に隣接した農地で長年働き、飛散した大量の石綿粉じんを浴びたためでした。南さんは「父が残した『このことを訴えてくれ』という言葉が、私の心に重苦しく残っています。なぜこんなことになったのか、という憤りを訴えていきたい」と思いを語りました。
原告を支援する大阪じん肺アスベスト弁護団の芝原明夫団長は「すきまのない被害救済のために、この裁判が力になれば」と全国に埋もれた被害者を励まし、ともにたたかっていく意義を強調しました。