2006年5月27日(土)「しんぶん赤旗」

不破所長の中国社会科学院学術講演

人類的課題で体制の
是非が問われる時代


 【北京=菊池敏也】中国社会科学院の「学術報告ホール」には、不破哲三所長の講演テーマが掲げられ、中国の第一線にたつ理論研究者が不破氏の講演に聞き入りました。中国でマルクス主義研究を担う若い研究者の姿も多く見られました。

 不破氏は、社会主義市場経済を進める中国が直面する課題も念頭におきながら、マルクス主義が今日の世界でどのような地位を占めるのかを明らかにしました。今日の中国では、新自由主義を含めた西側の経済学が一般社会だけでなく、学術界でも力を強めています。こうした状況も反映して、マルクス主義の研究者らと西側の経済学の影響を受けた研究者との間で、論争も起きるようになっています。

 不破氏は、今日の世界がどのような姿をしているか、四つのグループに分けて、その多彩さを示しました。そして、こうした変化した世界を分析する力をもった経済学は、「マルクス主義の経済学をおいてほかにない」と力説しました。

 マルクスがブルジョア経済学の最大の弱点は“資本主義の社会しか知らず、資本主義の法則が人類社会の永遠の法則だと思い込んでいる”とくりかえし述べたことを紹介し、「この批評は現代の西側経済学にもそのまま当てはまる」と指摘しました。

 このことは、中国の社会主義市場経済をどう見るかということにもかかわる問題です。不破氏は、中国の市場経済が「社会主義をめざす体制を基礎にした市場経済であり、市場経済一般に共通する性格と同時に、資本主義的市場経済とは別個の仕組みと役割をもち、別個の論理と法則が働いている」と指摘。資本主義以外の体制を知らない西側経済学にはこのことが原理的に理解できず、マルクス主義経済学こそが「社会主義をめざす市場経済の論理と法則を発見できる力を持っている」と、マルクス主義の研究者の現代的課題を提起しました。

 マルクス主義の立場から二十一世紀の世界をどう見るかについて話を進めた不破氏は、この世紀が「資本主義制度の存続の是非が問われる時代」と指摘しました。現代の資本主義で注目する必要があるのは「矛盾が直接資本主義制度の存続の是非にかかわる新たな形態で現れている」として、(1)発展途上国の前途の問題、(2)地球環境の問題―の二つの例をあげました。とくに地球環境の問題では、地球温暖化をとりあげ、地球の「生命維持装置」が壊されようとしている時、資本主義がこれを解決する力をもたないとしたら「資本主義にはもはや地球を管理する能力がないと結論を下さざるをえなくなる」と批判。不破氏は、こうした現代の資本主義の状況のなかに、「この世紀を体制的な変革の時代とするもっとも深い根拠がある」と解明しました。

 同時に不破氏は、地球環境問題などの人類的課題への対応力が試されるのは資本主義制度だけではなく、社会主義をめざす国々も「資本主義に代わるべき社会進歩の有効な形態であるかどうかが試されることになる」と述べ、ここに二十一世紀の「新しい特徴」があると強調しました。

 中国が社会的格差、環境汚染などの矛盾の解決に努力していることにふれた不破氏は、「これらの問題で中国が成功をかちとることは、二つの体制の共存と競争のなかでの成功として、国内的意義と同時に、大きな国際的意義をもっている」と描きました。不破氏は最後に、中国が「壮大な未来をもった国づくりで、社会主義をめざす国ならではの優位性を発揮して大きな成功を収め、そのことが二十一世紀の世界的な発展の大きな力となることを願う」と結びました。


講演骨子

(一)世界観としてのマルクス主義

 今回の講演の主題―今日の世界でマルクス主義はどういう地位を占めるか

 マルクス主義の自然観と現代の自然科学

 史的唯物論の諸命題は社会の“常識”になった

 変化する世界を誰が分析できるのか

(二)二十一世紀の世界をどう見るか

 二十一世紀は資本主義制度の存続の是非が問われる時代

 二十一世紀を体制変革の角度から見ると…

 二つの体制の共存と競争の新しい段階


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