2006年5月25日(木)「しんぶん赤旗」
主張
教育基本法改悪
現場荒廃させる危険がみえた
教育基本法改定案の審議が衆院特別委員会で始まり、首相出席のもとで、各党の代表が質問しました。
教育基本法の全面改定で子どもと教育をめぐって現場でどんな問題が起こるのか―。国民が知りたいことに切り込んだのが、日本共産党の志位和夫委員長の質問です。
愛国心強制と競争加速
教育基本法が改定されれば、二〇〇二年に福岡で実施され市民の強い批判で翌年から撤回された「国を愛する心情」を通知表で評価するというようなことが、全国に押し付けられるのではないか―。この懸念にたいし、首相は、評価すること自体が、憲法の「内心の自由」を侵す“間違い”であるとはいいませんでしたが、「評価は難しい」と認めざるをえませんでした。
通知表をめぐっては、多くの教師が、「愛国心といわれても評価できない」と悩んだことが、マスメディアでも問題になりました。
首相が、「難しい」と認める目標をなぜ学習指導要領に盛り込んだのか。しかも今度はその内容を法案に盛り込み、「達成」を義務づけています。評価が「難しい」という首相の答弁は、その難しいことが、法的に強制される危険を浮き彫りにした点でも、法案が肝心な中身で大きな矛盾を抱えていることを示した点でも重大です。
もう一つが、政府が基本法を改定して、まっさきにやろうとしている全国いっせい学力テスト問題についてです。志位委員長は、国連・子どもの権利委員会からも繰り返し是正を求められている“競争教育”とのかかわりを追及しました。
たとえば、独自に学力テストを実施している東京都では、学校ごとの順位の公表と小中学校の学区制廃止とが、セットで進められた結果、三つの区で、新入生がゼロの学校が生まれています。新入生を迎えるのが楽しみのはずの四月に入学式がない、これがその学校の子どもたちの心をどれだけ傷つけているか計り知れない―。志位委員長の告発に、首相は、「学力テストがいけないとは思わない」と居直りました。
志位委員長は学力テスト一般を否定したのではありません。いっせい学力テストが学校と子どもに序列をつけ、「勝ち組」「負け組」にふりわけるという、教育として好ましくないことが、学校現場で現実に起こっていると指摘したのです。
政府は、来年度に全国学力テストの実施を計画しています。全国学力テストの目的が、「競争意識の涵養(かんよう)」にあると、政府は明らかにしています(〇四年十一月四日の経済財政諮問会議に当時の中山文科相が提出した資料)。
こうしたねらいで教育の現場に競争をもちこもうとする教育基本法改悪が、だれもがわかる教育を求める国民の願いに背くのは明らかです。
徹底審議で廃案を
教育の荒廃や少年犯罪の原因を教育基本法にからめる、政府の手法にたいし、国民の間から「筋違い」(高知新聞四月十四日付)との声があがっています。
政府は、現行法のどこが問題か、何一つ説明できないでいます。それは、子どもと教育をめぐるさまざまな問題の根源が、教育基本法にあるのではなく、子ども一人ひとりの人間的な成長をめざす教育基本法の理念をないがしろにしてきた自民党政治にあるからです。
憲法をふみにじって、「愛国心」を強制し、子どもたちを競争に追い立てる、教育基本法改悪案は徹底審議の上、廃案にするしかありません。