2006年5月24日(水)「しんぶん赤旗」
大銀行 純益3兆円
地域経済犠牲■リストラ■収益至上主義
利息“ゼロ”いつまで
大手銀行六グループの二〇〇六年三月期決算が二十三日、出そろいました。税金などを払った後の純利益は、全グループ合計で前期比四・二倍の三兆一千二百十二億円に達し、バブル期を上回り過去最高を更新しました。三菱UFJが初めて一兆円を突破、三井住友も六千八百六十八億円と過去最高を計上しました。大銀行が大もうけをあげるワケをさぐってみました。(矢守一英)
■膨大な戻し益
三菱UFJの利益を大きく膨らませた要因の一つが、過去に積んだ不良債権処理のための費用の「戻し益」です。融資の焦げ付きに備えて積んでいた貸倒引当金が、融資先の経営が再建されたために不要になり戻ってきたものです。
多くが旧UFJ分です。ダイエーなど七つの大口融資先の不良債権の抜本処理を迫られた旧UFJ銀行は、公的資金も使って強引に処理を進めました。
大幅なリストラや地域経済への犠牲を伴った処理の結果、ダイエーなどは黒字に転換。旧UFJが貸し倒れに備えた引当金は不要になりました。三菱UFJの場合、その額は六千八十九億円にものぼります。
■店舗も人も減
もう一つの要因は労働者と店舗を減らすリストラの「効果」です。
三井住友銀行の場合、国内の店舗数は、〇一年に五百七十八あったものが〇五年には四百十二店舗に。従業員数は〇一年の二万七千人から〇五年には二万一千人に減らされています。
都市部でも、行員のいないATM(現金自動預払機)コーナーだけの店舗が増え、利用者は長時間待たされるなど、不便を強いられるようになっています。
■サラ金と提携
政府が不良債権の早期処理と「収益改善」をせまる中で、銀行がとってきた収益至上主義の経営もあります。
金融評論家の桜田氾さんは「その収益至上主義の典型ともいえるのが、処分を受けた三井住友の金利スワップの押し付け販売。銀行をそういう方向に駆り立ててきた小泉政権の金融政策も問題だ」と指摘します。
預金者には限りなくゼロに近い利息と高い手数料が押し付けられています。一方で銀行は、投資信託などの投機的な金融商品の販売を広げたり、大手サラ金との提携を強め高金利で稼いでいます。
本業のもうけを示す実質業務純益は、六グループ合計で減っています。一方、投資信託などの手数料収入を含む「非金利収益」の増加は、各銀行とも顕著になっています。
「サラ金の申し込みが銀行内で容易にできるなんて変だ」。銀行には言いたいことがいっぱいあると話すのは年金暮らしの岡田勲さん(68)。「これだけの大もうけをした銀行は、お金持ちだけでなく、少額の預金者への利益還元を考えてほしい」
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