2006年5月23日(火)「しんぶん赤旗」
女性差別撤廃条約 政府が報告準備
逆に広がった男女賃金格差
国連勧告に不誠実な日本政府
女性の運動を背景に前進面も
女性へのあらゆる差別をなくすための女性差別撤廃条約を批准して21年。日本政府は、条約内容の実施状況について6回目の報告書を国連に提出する準備をしています。国際条約にたいする政府の実行責任が問われています。
女性差別をなくすために、どんな措置をとり、どんな進歩があったか、締約国は四年ごとに国連の女性差別撤廃委員会に報告書を提出する義務を負います。同委員会は報告をもとに審査し勧告を出します。
財界の反対で「間接差別」は…
四、五回目の報告に対する前回の国連審査は三年前におこなわれました。日本の施策の遅れに厳しい批判がだされ、各分野にわたる具体的な改善が勧告されました。今回の政府報告は、それをどう実施してきたのかを盛り込む必要があります。
しかし政府の姿勢は、勧告は「法的拘束力を有するものではない」としており、誠実な対応とは程遠いものです。
その端的なあらわれが、国会で審議中の男女雇用機会均等法改正案の「間接差別」の扱いです。大企業のコース別雇用管理など、結果として男女格差をもたらす間接差別は、十一年前の勧告で是正するよう指摘され、三年前には「国内法に」とりこむよう勧告されました。しかし法案は、財界の強い反対におされて禁止対象を「昇進における転勤要件」など三つに限定。しかも業務上必要と見なされれば差別とならないとしており、「実効性がない」と批判が続出しています。
勧告はさらに、男女の賃金格差や、パート・派遣労働に女性が多く低賃金なこと、家庭生活と職業の両立が困難なことを指摘。「男女の事実上の機会均等の実現」「両立を可能にする施策」の強化が必要だとしています。しかし、政府は労働法制を相次いで改悪し不安定雇用を増やす一方、その低賃金は放置しています。小泉「構造改革」のもと社会全体で格差が拡大し、縮小傾向にあった男女の賃金格差も拡大しています。
「夫婦別姓」など大きく立ち遅れ
日本の夫婦同一姓や婚外子差別について、女性差別撤廃委員会は最初の審査(一九八八年)のときから指摘し、前回勧告は「差別的な法規定」の「廃止」を求めています。しかし日本政府はいまだに「国民の議論が深まるよう引き続き努める」(改定男女共同参画基本計画、〇五年十二月)という姿勢です。
いま世界の大多数の国で夫婦別姓が選択できます。政府の法制審議会が、選択的夫婦別姓制度の導入などを答申してからも十年がたっています。日本は世界の流れからも大きく立ち遅れています。
国連では、権利を侵害された女性が直接国連に通報できる制度を定めた女性差別撤廃条約・選択議定書が二〇〇〇年に発効しました。批准国は七十八カ国(三月現在)に広がっており、国連も日本政府に批准の検討を求めています。早期批准を求める請願は参院本会議で六回採択されています。しかし政府は「締結の可能性について検討」というだけで、その内容も時期も明らかにしていません。
差別是正裁判は次つぎ勝利和解
一方この三年間、女性たちの運動を背景に前進したこともあります。育児介護休業法の改正、配偶者暴力防止法改正、「人身売買」罪をもりこんだ刑法等の改正がおこなわれました。職場の女性差別是正を訴えた裁判は、住友三社、野村証券などで次々と勝利の和解が成立しました。
日本共産党は、政府が勧告を真摯(しんし)に受けとめ、女性差別を実質的に是正するよう要求。質問主意書を提出し▽民法改正▽審議会などへの女性の参加の促進▽選択議定書批准など勧告の実施を求めてきました。党が国連勧告の周知を要求したことを受けて、内閣府男女共同参画局のホームページに女性差別撤廃委員会の一般勧告二十五本が一挙に掲載されるようになりました。(日本共産党女性委員会 事務局・坂下久美子)