2006年5月23日(火)「しんぶん赤旗」
原爆症訴訟 大阪地裁判決
国が控訴、原告ら抗議
原爆症の認定を求める集団訴訟で、厚生労働省は二十二日、原告九人全員の認定却下処分を取り消した大阪地裁判決について「国の科学的理解と異なる」(同省健康局総務課)などとして控訴しました。これにたいし原告・弁護団、日本被団協や日本原水協などが抗議の声明を発表しました。
集団訴訟は、国が厳しい認定基準を設け、被爆者のがんや肝機能障害などを原爆症と認めず、救済を拒んでいるために全国でおこされています。十二日の大阪地裁判決では、厚労省の認定基準が「考慮要素の一つにすぎない」と批判しました。
国は大阪地裁判決以前にも、同種の原爆症認定裁判で七回も敗訴。被爆者や支援者は、判決に従って認定制度を改めるよう求めていました。
原告の女性(81)は「涙で喜びあってわずか十日もたたないなかで控訴されたとの知らせを受け、耳を疑いました。このまま裁判を続けて一人一人日の目を見ないで死んでいくのを待たれているのかとかんぐりたくもなります。また、ない力をふりしぼって被爆者のためにたたかいます」と語りました。
各団体が抗議
政府が原爆症認定集団訴訟大阪地裁判決について控訴したことに各団体は二十二日、抗議声明などを発表しました。
日本原水協(原水爆禁止日本協議会)は小泉首相と川崎厚労相に抗議文を送付。「『残された命』と向き合って生きている被爆者に対する二重の冷酷な仕打ち」とのべ、控訴を取り下げ、「あまりに機械的で冷酷」な被爆者援護行政を是正するよう求めています。日本被団協(日本原水爆被害者団体協議会)や原爆症認定集団訴訟を支援する全国ネットワーク、同訴訟全国弁護団連絡会など六団体は、連名で抗議声明を出しました。
原爆症認定をめぐる裁判で八回目の国の敗訴であり、厚労相が原告らと会おうともせず控訴したことを批判。全国の原告のうち二十六人が死亡しており、認定行政を抜本的に改めることこそ厚労相がやるべきだったと指摘し、実現までたたかい続けると結んでいます。