2006年5月23日(火)「しんぶん赤旗」
追及 米軍再編
国内分経費 2兆3000億円
「地位協定」根拠というが…
日本に支払い義務なし
日本側負担が総額三兆円とされる在日米軍再編経費―。政府はこのうち国内での費用(約二兆三千億円)は「日米地位協定第二四条に基づいて(日本が)負担」(額賀福志郎防衛庁長官、十一日の衆院本会議)するとしています。しかし、地位協定は費用負担の根拠にはなりません。(竹下岳)
「(在日米軍再編で)施設整備に要する建設費その他の費用は、明示されない限り日本国政府が負担する」―。日米安保協議委員会(2プラス2)で合意(一日)した在日米軍再編「最終報告」に明記された原則です。
「最終報告」は、在沖縄米海兵隊の移転のためとしてグアムの米軍施設建設費の日本負担(約七千億円)を明記したほか、日本国内の再編経費も原則、日本側の負担としました。
負担を当然視
「最終報告」で米側が負担することになっているのは、青森県内の「ミサイル防衛」関連施設の建設費などごくわずかです。ところが、これについても「日米間の協議でそうなったが、本来は地位協定で日本政府が負担することになっている」(外務省筋)とされます。国内の米軍施設建設費は日本の全額負担が当然という考えです。
地位協定とは、日本国内に駐留する在日米軍の特権的な地位を定めた協定です。
同協定第二四条は、在日米軍の駐留経費負担を規定しています(別項)。素直に読めば、日本が負担するのは米軍に既存の施設・区域を基地として提供するのにかかる借上料や補償費だけです。提供された基地の中に新たな施設を建設することを含め、米軍の維持経費は米側がすべて負担すべきものです。
実際、政府も「(提供された施設・区域に)米軍が入りました後においていろいろな備品をつくる、設備をつくる、家を建てる、これは自分でやるのが建前」(一九七〇年、山上信重防衛施設庁長官)と述べていました。
拡大解釈重ね
ところが、政府は七二年の沖縄返還の際、在日米軍基地内の施設改修費六千五百万ドル(二百三十四億円)を、地位協定の「リベラルな解釈」(七三年、大平正芳外相)で負担し、拡大解釈に踏み出しました。
米国の度重なる圧力を受け、七九年度からは、米軍基地内に日本側の負担で新規の施設を建設するのも地位協定上、可能だとして拡大解釈を本格化。「思いやり」予算による施設建設が始まりました。司令部棟、格納庫、滑走路、弾薬庫、住宅、学校、娯楽施設…。あらゆるものが日本政府の予算で建設され、その総額は二〇〇六年度までで二兆円を超えました。
際限ない負担
冒頭の政府の主張も、地位協定の勝手な拡大解釈にすぎません。
しかも、「最終報告」では、施設建設に加え、米軍機の訓練移転費も日本側が負担することになっています。政府は現在、米空母艦載機の夜間離着陸訓練(NLP)の移転費を負担していますが、「地位協定の範囲内」とは説明できず、米国と「特別協定」を結んでいます。仮にこうした費用も地位協定を根拠にするなら逸脱の上に逸脱を重ねることになります。
さらに、政府内には「地位協定は適用されない」としている在沖縄海兵隊のグアム移転費について「財政法には、外国政府の資産になる施設建設のための財政的支出を明示的に禁止する規定はない」(防衛庁筋)とし、なんの取り決めもせず負担する考えもあります。
米軍施設の建設費負担めぐる動き
本来 日本負担は地権者、住民への借上料、補償費だけ
“米軍の設備、住宅建設は自分でやるのが地位協定24条の建前”(1970年、山上防衛施設庁長官)
転機 沖縄返還に伴う施設改修費を負担(6500万ドル=234億円)
“地位協定のリベラルな解釈を保証する”(73年、大平外相)
拡大 米軍施設建設を日本負担で本格的に開始(79―06年度で2兆円超える)
“在日米軍に「思いやり」の気持ちを持とう”(78年、金丸防衛庁長官)
米軍再編経費を原則、日本負担に(3兆円)
日米地位協定24条 (抜粋)
1 日本国に合衆国軍隊を維持することに伴うすべての経費は、2に規定するところにより日本国が負担すべきものを除くほか、この協定の存続期間中日本国に負担をかけないで合衆国が負担することが合意される。
2 日本国は…施設及び区域並びに路線権(飛行場及び港における施設及び区域のように共同に使用される施設及び区域を含む。)をこの協定の存続期間中合衆国に負担をかけないで提供し、かつ、相当の場合には、施設及び区域並びに路線権の所有者及び提供者に補償を行なうことが合意される。