2006年5月22日(月)「しんぶん赤旗」
教育基本法改悪 何が問題か
NHK日曜討論 石井副委員長の発言
日本共産党の石井郁子副委員長は二十一日、NHK番組「日曜討論」に出演し、教育基本法問題について、各党の教育政策責任者と討論しました。
「改正」理由語れない与党
教育基本法「改正」の理由について、自民党の町村信孝元文相は、基本法制定から「(約)六十年いろいろな条件が変わってきた」「さまざまな教育上の問題は一刻もゆるがせにできない」などと発言。公明党の太田昭宏幹事長代行も「いじめや不登校などは(基本法制定の)昭和二十二年(一九四七年)当時にはなかった」などとのべました。
それに対し、石井氏は、「先週の本会議でも、教育基本法のどこが問題なのか質問したが、明確な答弁はなかった。変えなければいけないという根拠は十分示されていない」と指摘。「確かに子どもたちの間にもたくさんの問題が起きているが、それは、一つひとつ原因を考えなければいけないこと。教育基本法のせいだというのは筋違い」とのべた上で、いま教育で起きている問題は、歴代政府が、教育基本法の民主的な理念を棚上げにしてやってきた教育政策に原因があり、それをただすことが先決だ、と主張しました。
民主党の西岡武夫元文相は、「本来なら新しい憲法にもとづく教育基本法をつくるべきだが、政府与党が(改定案を)出してきたから民主党としての考えをまとめた」などとのべました。
「内心の自由」に踏み込む
政府の改悪法案が「教育の目標」に二十もの「徳目」を書きこんでいることについて、町村氏が「現実に教職員組合が、『道徳教育粉砕運動』を昭和三十年(一九五五年)からずっとやっている。法律的にそこを担保することも必要だ」などと発言。
石井氏は日本共産党は、真の愛国心を含む市民道徳を提唱していることも紹介しながら、「道徳は、合意をつくっていく筋道が大事であり、(政府が)強制するものではない」と指摘。東京ではすでに激しい「日の丸・君が代」の強制がおこなわれていることにもふれながら、「『教育の目標』になると、それから、達成を図る、評価もするという仕組みになってくる。そういう仕組み、義務づけは本当に(内心の自由を保障した)憲法上許されない」と批判しました。
教育格差の是正政府の責任で
後半、司会者が「教育格差の広がりに対する国民の不安を『改正』案は受けとめているのか」と問題提起。
町村氏は、「現実に高校進学率が97%、大学も五割を超え、希望する人は全入状態。貧しいから上の大学に進めないという状態はほとんど見当たらない」という認識を示しました。
石井氏は、「教育の機会均等は憲法上保障された大切な権利。国として保障していかなければならない」とのべた上で、実際には、経済格差のなかで困難になってきていると指摘。「学費の問題でも、高校中退者が本当に多い。全入といわれるが、現実には崩れてきている。教育扶助・就学援助率も十年ほど前は6・6%だったが、いまは12・8%。倍に増えている。これは予算できちんと措置することが先決だ」と主張しました。
町村氏は、「私もいまの公的支出が十分かといえば率直にいって不十分」などとのべました。
権力の介入こそ「不当な支配」
教育に対する国家の介入をどうみるかについて、太田氏は、政府案では、「教育は、不当な支配に服することなく」という文言を残したが、法律に従って行うべき仕組みとしたことを説明。
西岡氏は、教育委員会制度を廃止し、首長の責任にすることや、学校理事会制度の導入などを主張しました。町村氏は「組合が教育内容に介入してきている」と敵視。一定限度を超えた権力の介入は許されないとした家永裁判での判決(一九七〇年)を「誤った判決」などと非難しました。そのうえで、「法律にもとづいてやることはなんら『不当な支配』にあたらないと明確にする」などと、改悪法案の狙いを語りました。
石井氏は、「そういう発言だと、この法案はますます重大だ。現在の教育基本法では、教育内容に国は介入せず、『諸条件の整備』に努めるというのがある。ところが、今度の法案では、『諸条件の整備』がなくなっている。逆に教育の内容は、法律や振興計画にもとづいて目標通りにやれ、となると教育内容に国が無制限に介入していくことになる。国家権力が介入することが一番の『不当な支配』だ」と批判しました。