2006年5月22日(月)「しんぶん赤旗」

主張

海外経済協力会議

米・大企業奉仕見直しが先だ


 政府の海外経済協力会議が政府開発援助(ODA)実施のあり方について議論を開始しました。

 首相を議長とし内閣官房長官、外相、財務相、経済産業相からなるこの会議は、「戦略的司令塔」(安倍内閣官房長官)としてODAを一元的に決定・実施するため設置されました。しかし、肝心なODAについて、アメリカの世界戦略補完と海外に進出する日本大企業奉仕の役割をさらにつよめることを中心にすえるのでは、飢餓・貧困にあえぐ諸国の期待にこたえられないことは明白です。

「国益」論の誤り

 いま世界では、約六十億人のうち十二億の人が一日一ドル(百十円程度)以下で暮らし、飢えている子どもが約四億人もいます。二〇〇〇年の国連ミレニアム・サミットのさいつくられた「ミレニアム開発目標」は、二〇一五年までに、飢餓人口と一日一ドル以下で生活する極度の貧困を半分にするなどの目標を設定し、各国に協力を呼びかけています。

 日本は、憲法の平和原則にしたがい人道援助の分野でこそ積極的役割をはたすべきです。しかし、海外経済協力会議は、アメリカの世界戦略の補完と日本大企業奉仕の強化をますますつよめようとしています。

 同会議の設置を提言した「海外経済協力に関する検討会」の報告書(二月二十八日)は、「国益」のためのODAをうちだしています。「国益は価値観や理念を共有する国々を機軸とする国際関係の中に位置づけられた場合に、初めて実現可能」とのべているのは、日本の外交政策への同調を押しつけ、ODAに差別・選別を持ち込むものです。日本の国連安保理常任理事国入りの支持押し付けの魂胆がありありです。

 イラクなどを例にあげ「テロや大量破壊兵器の拡散などの脅威の原因を除去」することが「不可欠」とのべ、アメリカの対テロ戦争支持をODA実施基準にしているのは重大です。二月作成のパキスタン国別援助計画(案)は、「テロとの闘いの前線国家として国際社会に貢献する道を選択」「米国を含む先進諸国との関係の好転」を評価しています。ODAを使ってアメリカへの追随をせまるなど常軌を逸しています。

 大企業本位はさらに露骨です。「貧困の削減」のためには「持続的成長が不可欠」、「そのためにインフラ投資が必要」という論法で、企業活動に必要な道路、港湾などの経済基盤整備をことさら強調しています。

 二国間ODAのなかの経済基盤向けは、援助二十一カ国のうちでも日本が異常突出しています。〇三年実績で、アメリカ2・2%、援助国平均9・2%に比べ日本は21・7%です。人道分野に資金が回らないのは当然です。食糧援助はわずか0・2%。アメリカ13・2%、援助国平均8・4%をはるかに下回っています。

 「国益」だといって、アメリカと日本の大企業のために国民の血税を湯水のようにつぎこむことは言語道断です。国際社会が約束した飢餓・貧困撲滅への貢献をおろそかにすることは許されません。

人道援助優先へ

 小泉首相は昨年、アジア・アフリカ首脳会議で、アフリカ援助の強化を表明しましたが、飢餓・貧困に苦しむアフリカ貧困三十二カ国向けODAの割合を、二〇〇〇年7・3%から〇四年5・9%に切り下げたのはほかならぬ小泉首相です。

 国連安保理常任理事国入りに必要な支持票欲しさからではなく、飢餓・貧困撲滅を基本にするODAに抜本転換することが急務です。


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