2006年5月21日(日)「しんぶん赤旗」

主張

「臨海」三セク破たん

都政のがんにメスを入れよ


 東京都の臨海副都心開発で、都が過半を出資する半官半民企業の第三セクター三社が三千八百億円にのぼる巨額の負債をかかえ、東京地裁に民事再生法の適用を申請しました。

 昨年三月に民事再生法適用を申請した二社に加え、臨海副都心などでビル経営に乗り出し、破たん状態にあった三セク五社がようやく処理に向かいます。都政に巣くう大きな癌(がん)である「臨海」開発に抜本的なメスを入れる契機とすべきです。

傷広げた石原都政

 「東京のオフィス需要にこたえる」という名目で臨海部に霞が関ビル四十五棟分のとてつもない巨大都市をつくろうとした「臨海」開発計画。バブルの絶頂期に、財界と自民党政府の肝いりでつくられた計画は、いまや完全に行き詰まっています。

 破たんした三セクは「臨海」の中核事業であるビル経営を担うため、八〇年代末に次々設立されました。保有ビルのテナントは埋まらず、赤字に次ぐ赤字を重ねました。過大なオフィス需要予測にもとづく開発の無謀ぶりが直撃した形です。

 都の天下り役員が採算度外視の事業をすすめ、銀行・ゼネコンいいなりの過大な借入金・過剰投資をかかえるという三セク特有の無責任経営が招いた破たんです。直接の財政負担だけでも三百八十一億円が都民に負わされます。

 石原慎太郎都知事は三社の破たん処理を発表した会見(十二日)で、都民への謝罪の言葉一つ口にしませんでした。「私の前の前の代(の知事)の話だ」と責任回避しましたが、これは通りません。

 石原氏が知事に初当選した一九九九年の選挙では、すでに破たんを深めていた「臨海」をどうするかが争点となりました。当選後の石原知事は、三セク三社にたいして九八年度から二百七十億円の財政支援をおこなう計画を追認しました。ビルを都が借り上げる支援や地代の減免、収益事業の丸投げなど、さまざまな支援策を継続しました。ばく大な公的資金が無駄になりました。

 石原知事は、「臨海」開発そのものについて「首都東京の活力と創造力を生み出す新しい重要な事業」とのべ、浪費の大型開発計画にしがみつきました。この七年間に現金投入や土地の提供など二兆五千億円もつぎこんできました。抜本見直しの機会はあったのに、石原知事がそれをしなかったことが、傷を大きくしたのです。過去の知事に責任を押し付けることはできません。

 知事は会見で「議会も行政も判断が甘かったかもしれない」とものべました。たしかに無駄遣いの「臨海」推進役となってきた自民、公明、民主の各党にとっては、耳の痛い言葉でしょう。しかし、日本共産党にはあたりません。「臨海」開発に最初から反対し、抜本見直しを一貫して要求してきたからです。

都民参加で再検討を

 日本共産党は、「臨海」の行き詰まりを都民参加で打開するために(1)問題の所在と反省を都民に示す(2)計画に深くかかわった国の責任を求める(3)出資者として経営責任をもち、事業から巨額の利息収入をあげてきた大銀行の負担で都民の財産を保全する―ことを提言してきました。

 石原都政は三セクの破たん処理後、新しい枠組みで「臨海」を継続することをねらっています。オリンピック誘致をテコにした大型開発拡大の姿勢も鮮明です。「臨海」破たんの根源にある巨大開発優先、都民施策切り捨ての「逆立ち」都政そのものの転換が、いま強く迫られています。


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