2006年5月20日(土)「しんぶん赤旗」
「侵入に当たらず」
葛飾ビラ弾圧 刑法学者ら証言
東京・葛飾区のマンションで日本共産党の都議会報告などのビラを配った荒川庸生さんが、住居侵入罪で不当に起訴されている弾圧事件の第十一回公判が十九日、東京地裁であり、弁護側証人として憲法と刑法の学者が出廷しました。荒川さんのビラ配布は住居などへの「侵入」には当たらず、刑罰を適用することは憲法違反になると証言しました。
立命館大学法科大学院の松宮孝明教授(刑法)は、「侵入」とは住居権者の意思に反する立ち入り(住居権の侵害)だが、荒川さんが立ち入った廊下などの共用部分は、住民みんなで使うものであり、「住居権者の意思」は住民たちの「総意」になると指摘。(1)オートロックなどの物理的な障壁が設けられている場合は立ち入りを拒絶する住居権者の「総意」が明示されていると解釈できるが、「立ち入り禁止」の張り紙だけではすぐに「総意」の明示とはいえない(2)しかし拒絶の総意が明示されていなくても、夜間に立ち入るなど市民の常識で見て不穏な態様や目的で立ち入った場合は住居権者(住民)の総意に反した「侵入」になる――と解説しました。
その上で、荒川さんのように合法的なビラを平穏に配布するために、物理的に閉ざされていない共用部分に立ち入るのは、明示された住民の総意に反したわけでも、「不穏」に立ち入ったわけではなく、「侵入にあたらない」と証言しました。
立命館大学法科大学院の市川正人教授(憲法)は、平穏なビラ配布は弊害が少なく、ビラ配布のための共用部分への立ち入りを規制して得られる利益に比べて、刑罰で禁止されることで重要な表現手段が行使できなくなる深刻さ、表現の自由の重要性は大きいと証言。荒川さんの立ち入りに住居侵入罪を適用し処罰するのは「憲法違反になる」と証言しました。