2006年5月20日(土)「しんぶん赤旗」
主張
GDP
暮らしへの還流 やせ細り
ことし一―三月期のGDP(国内総生産)は、実質で前期比0・5%のプラスになりました。二〇〇五年度の実質成長率も3%増で、四年連続で増加しました。
政府の景気判断によると景気は二〇〇二年一月に「谷」をつけて以来、五十カ月以上も「拡大」が続いていることになります。戦後最長の「いざなぎ」景気の五十七カ月を超えるかどうかが話題になるほどです。
そんなに長期にわたって景気が拡大しているというなら、庶民の暮らしにも、もう少し回復の実感があっていいはずです。
生活が苦しくなる矛盾
日銀が四月に発表した「生活意識に関するアンケート調査」によると、景気が「良くなっている」と答えた人が22%、「悪くなっている」は15・9%です。この設問を始めた一九九六年以来、初めて「良くなっている」の方が上回りました。
ところが、現在の暮らし向きについての設問に「ゆとりが出てきた」と答えた人はわずか7・6%で、「苦しくなってきた」人が44・8%と圧倒的です。
同じ調査で、収入が増えた人は一割にも満たないのに、減った人が四割近く、変わらない人は五割を超えています。生活が「苦しい」という実感には、収入が増えない、減っているという現実の根拠があります。
上場企業の決算は、四年連続の増収増益、三年連続で過去最高益を更新する見通しです。他方で十二日に発表された一―三月期の家計調査によると、総世帯の実収入は六期連続で実質減少しました。いまだに消費支出は二〇〇〇年の水準を下回り続けています。
戦後最長の景気拡大になりそうだと言われているのに、多くの国民の暮らしは良くなるどころか、一段と苦しくなるというのは極めて異常な事態です。
こうしたゆがみは、GDP統計にもくっきりと表れています。
「いざなぎ」景気や「バブル」景気など、戦後の景気拡大期と比べると、今回の個人消費の実質成長率は過去三番目の低さです。対照的に、輸出は過去二番目の高さを記録しています。(第一生命経済研究所のリポート)
小泉「構造改革」は「改革なくして成長なし」を看板に掲げてきました。しかし、今回の景気拡大は、大企業の「輸出主導」という従来型の成長パターンを、いっそう極端なかたちで再現しています。
大企業から家計に資金が回る主なルートは雇用と賃金です。それが、リストラ人減らしや、大量の正社員を非正規雇用に置き換えることによって、かつてなく細く狭められてきました。
従業者の八割が働く中小企業との取引、法人課税の納税による所得再分配など、家計に向かう別のルートも下請け単価たたきや大企業減税・庶民増税で圧縮されています。
経済政策の抜本転換を
大企業の国際競争力はどんどん強くなっています。問題は、それにもかかわらず、家計の収入も消費も低迷したままだということです。
経済的にも社会的にも弱い立場に置かれた人たちに犠牲を強いるやり方を転換すべきです。
大企業の国際競争力の強化を優先する「構造改革」は日本経済の異常なゆがみをますますひどくします。
いま必要なのは、空前の大もうけを上げる大企業から家計への、資金の還流ルートをしっかりと太くする経済政策に切り替えることです。