2006年5月19日(金)「しんぶん赤旗」

主張

少子化対策報告

これでは展望が開けない


 政府の少子化社会対策推進会議の専門委員会が「これからの少子化対策について」の報告をまとめました。報告はこの六月の「骨太方針二〇〇六」に反映するとしています。

実態を逆手に負担増

 現在の日本社会の「少子化」傾向は先進国のなかでも「超少子化」といわれるほど、歯止めのかからない状況がすすんでいます。

 少子化傾向の克服は、まともな働き方やくらしが破壊されている日本社会から、若い世代が将来に希望がもてる社会への道筋を切り開く課題です。報告がその期待に応え、解決の一歩になっているのかということです。

 報告は、政府機関や研究機関のさまざまな調査をもとに日本の少子化の現状と要因、欧州諸国の総合的な施策などにも触れています。妊娠・出産関連の負担軽減など、具体化が当然の内容もあります。

 重大なのは、報告の基本的な考え方として、「子育て家庭を社会全体で支援する対策」の必要を強調し、国民への負担を求めていることです。ここでの「社会」全体というのは「国民」全体であり、政策面では民間活力、財政面では「骨太方針二〇〇五」が提起した社会保障給付の見直しです。そのための意識改革を力説、高齢者関係の給付が手厚いから児童・家族関係費の支出を優先し、社会保障給付費の枠のなかで給付の分け合いをせよというものです。

 児童・家族関係費は対GDP比で世界でも下位にあると強調しますが、高齢者関係給付も下位であり、国民を分断し社会保障の切り捨てを合理化しています。

 報告は、政府の少子化対策「子ども・子育て応援プラン」にはすべて網羅されているが残された課題を検討するとして、制度改悪につながる提案を盛り込んでいます。

 保育サービスの拡充では、いま国会で市場原理にゆだねる規制緩和として問題になっている「認定子ども園」制度の促進を強調しています。

 子育て費用の負担軽減の必要をいいながら、もっとも重い負担となっている高校や大学の教育費負担に対して、「大学の授業料等は基本的には本人の負担」であり、奨学金を貸し出すから、卒業後に円滑な返還ができるようにするとしています。

 欧州の多くの国では教育費無償が当たり前であり、日本社会のルールの異常さをきわだたせます。

 少子化傾向を深刻にしてきたのは、自民党政治が新自由主義の経済路線をすすめ、貧困と社会的格差を広げ、人間らしく暮らす社会のルールを破壊してきたからです。労働時間の規制緩和と労働法制の改悪、増税や社会保障切り捨ては子育て世代への負担と障害を増大させました。

 ところが、報告は、あらたに経済的支援の財源として、「育児保険や子育て基金等、社会で負担を分かち合う仕組み」を提起しました。大企業の利潤追求をなによりも優先する小泉「構造改革」路線のうえにたってつくられた報告が「骨太方針」に盛り込まれていったら、あらたな国民負担の拡大で、少子化傾向がいっそう促進されます。

悪政のテコにするな

 いま必要なのは、大企業・財界の横暴と身勝手を許さず、雇用の安定、労働条件や労働環境の改善、福祉、教育、家族政策の充実です。そして女性も男性も仕事や子育ての選択によって困難や差別がない人間らしい暮らしができる社会です。少子化問題を悪政促進のテコにさせてはなりません。


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