2006年5月18日(木)「しんぶん赤旗」

耐震偽装・小嶋社長逮捕

責任転嫁やめて

真実話してほしい

被害住民 国は救済へ本腰を


 国土交通省が耐震強度偽装問題を公表してから、ちょうど半年となった十七日、関係者の起訴や再逮捕、逮捕など事件は大きく動きました。しかし、偽装マンションを購入した住民の建て替え費用など生活再建をめぐる問題はじめ、事件の責任追及や全容解明、再発防止策の確立などは、いよいよこれからの課題です。


 東京・大田区の「グランドステージ池上」の元住民男性(51) 一九九九年に購入した当初から手抜き工事と思える不具合がたくさんありましたが、ヒューザーは住民からの問い合わせや要望に対してまったく不誠実な対応に終始してきました。

 小嶋進社長は反省し、謝罪する気持ちがあるなら、責任のなすりあいはやめて、これまでのこと、すべて真実を話してほしいと思います。

 建て替えのための二千万円という新たな負担は大変なことです。被害住民の現状打開のために、国が本腰を入れて救済してほしい。

 同時に、建物が本当に安全なのか、だれがどう確認していくのかは大変な問題です。国民が安心して住めるように、国が徹底して、真剣にこのことに取り組むように求めたい。

 こうした事件を生んだ背景には、アメリカのいうような方向で規制緩和をどんどんすすめてきたことが原因のひとつだと思う。こういうやり方も見直すべきではないか。

 東京都稲城市の「グランドステージ稲城」の元住民女性(50) 小嶋社長は、事件後の住民説明会でも、話すことが矛盾していたり、二転三転したりと、とても信用できないという感じでした。偽装事件の闇は深いものがあると思うが、本当のことをはっきり話してほしい。そのことを一番に言いたいです。

 昨年の十一月二十七日に退去勧告をうけて、一カ月くらいであわてて引っ越ししました。いまは狭い賃貸マンションで不自由な生活を送っていますが、一日も早く元の生活を取り戻したいです。

 住宅ローンはとりあえず一年間の支払い猶予を受けられましたが、今後二重ローンを抱えることになるのでは、と思うと不安です。

 責任のなすりあいばかりで、国が責任を認めようとしないことが、私たち被害住民の生活再建がいっこうに進まない一因だと感じます。


解説

検査引き継ぐ自治体 負担過大と反発

 耐震強度偽装問題の背景には、一九九八年の建築基準法改悪で建築確認・検査の民間開放を導入したことがあります。当時、日本共産党は「安かろう、悪かろう」の検査が横行する危険性を指摘、唯一反対しましたが、今日の事態は残念ながらこの懸念が的中してしまいました。

 たとえば、今回、多くの物件の偽装を見逃し、社長が起訴された「イーホームズ」の建築確認件数は年間約一万三千件(二〇〇四年度)にものぼりました。一日平均三十六件という、とてつもない数です。同社は五月いっぱいで建築確認・検査業務をやめますが、この膨大な件数を引き継ぐことになる自治体からは「財政的、人的、書類等の保管スペースからも、負担が過大」と反発の声があがっています。

 姉歯物件に続いて偽装が発覚した福岡県の設計会社は一件あたり一週間という特異な速さで構造設計をしていたといいます。

 政府・与党は再発防止策として建築基準法等改正案を提出、審議が始まっていますが、肝心の建築確認・検査制度の枠組みは民間まかせのままです。建築確認・検査は地方自治体がすべて責任を持つことや、民間検査機関は地方自治体の委託にもとづいて検査業務を行うようにすることが求められています。

 被害住民の生活再建についても、国指定の民間検査機関が偽装を見落とすなど、国の制度の不備に原因がある以上、ローンの元本減免はじめ、移転費や仮住まいの家賃、解体費、建て替え費用などについて「支援」ではなく、賠償を求める声が出ています。

 今回の事件では、政治家の関与も明らかになっています。偽装マンションを販売した業者の側に立って行政に働きかけたり、民間検査機関から献金をもらった政治家の責任も追及する必要があります。(藤沢忠明)


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