2006年5月18日(木)「しんぶん赤旗」
イラク米軍
「心の病」でも派兵
派遣3カ月未満で自殺7人
【ワシントン=山崎伸治】米軍が、精神的な疾患を抱えていることを知りながら、イラクに派兵した結果、自殺に追い込まれた兵士もいる―米紙が米軍資料や、百人以上にのぼるイラク帰還兵とその家族へのインタビューに基づいて、その実態を告発しています。
米紙が報道
一九九七年制定の法律は、派兵されるすべての兵士に「精神上の健康の評価」を行うことを米軍に課しています。しかし米コネティカット州の日刊紙ハートフォード・クーラント十四日付が情報公開法で入手した米軍資料によると、米軍は、問診表に記入するだけで終わらせています。
同紙は「精神上の問題を自己申告した兵士が精神病の専門家に調べられるのはまれ」だと指摘。イラク戦争開始から二〇〇五年十月までの間、問題を自己申告した兵士は全兵士の6・5%、さらに診断を受けたのは0・3%しかいなかったと報じています。
〇三年三月の戦争開始から〇五年末までにイラクで自殺した兵士は五十九人。このうち、〇五年は二十二人で、これは同年に戦闘行為以外で死んだ兵士の五分の一に当たります。
同紙はこの二十二人のうち、少なくとも七人は派兵されて三カ月未満で自殺しており、「派兵前の検査の妥当性が問われる」と指摘。また少なくとも三人は「精神上の深刻な状態」があったにもかかわらず派兵されていたとしています。
前線で精神的ストレスを訴える兵士には、副作用の危険があるにもかかわらず、抗うつ剤や精神安定剤などを投与。自殺した兵士の中には、こうした薬剤の副作用によるものもあったといいます。
また最初の派兵で心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断された兵士が、二度、三度と派兵されています。〇五年から〇六年初めに自殺した少なくとも七人はそれに該当すると報じています。
同紙はこの背景に、兵士の不足があると指摘。「新兵の獲得はずっと難題だった」という陸軍の精神衛生の専門家の声を紹介しています。