2006年5月17日(水)「しんぶん赤旗」

主張

「農政改革」法案

農業と農村を崩壊させるな


 日本には豊かな農産物を生産する条件があります。新緑の季節を迎え、農作業も本格化していますが、その豊かな国産農産物が食卓から奪われようとしています。

 いま国会で審議中の「農政改革」関連法案が、多くの農家と農業生産を非効率と決めつけて農政の対象から排除しようとしているからです。

 その中心が「品目横断的経営安定対策」といわれる対策です。これまで米、麦、大豆など品目ごとの価格政策、経営安定対策を全面的に廃止し、一部の大規模経営と一定の要件を満たした集落組織に助成対象を限定する仕組みに変えるものです。

くらしに重大な影響

 農政の対象を一部の農家に限定するやり方は、農政のあり方の根本的な転換を意味します。農家と農業、農村だけでなく、安全な国産農産物の供給や国土・環境、地域経済を脅かし、国民生活全体にも重大な打撃を与えずにはおきません。

 政府は、すでに法案成立前から、対象を四ヘクタール(北海道十ヘクタール)以上の認定農業者か、二十ヘクタール以上で一定の要件を満たした集落組織に限定して、自治体や農協にそれに合わせた担い手づくりを急がせています。

 政府は、それによる「『担い手』カバー率は、おおよそ販売農家の三割、経営耕地面積ベースの五割と推計」(四月五日、衆院農水委)されるといいます。非常に楽観的な予測であり、さらに多くの農家、農地が対象外になることは明らかです。

 麦や大豆などは、輸入価格に影響される販売価格が生産コストをはるかに下回るため、生産の維持には助成金が不可欠です。「品目横断的経営安定対策」は「担い手」だけに、過去三年間の実績をもとに面積単位の格差是正の助成金を出しますが、生産拡大は対象外です。

 「品目横断的経営安定対策」のもう一つの仕組みは、米をふくめ価格低落による農業所得の減少を補てんする制度で、基金を拠出した「担い手」だけが対象です。保障の基準が市場価格のため、価格が下がれば保障額も下がり、「担い手」の経営を安定させる保障もありません。

 このように、大多数の生産者を政策対象から締め出し、「担い手」の経営安定すら保障されないのですから、国内生産の縮小は避けられず、国民多数の願いである自給率の向上もまったく見込めません。

 食料は国民の生命に直結し、毎日大量に必要なため、可能な限り自給することが国際的な課題となっています。欧米諸国は、健全な農山漁村の維持が安定した社会にとって不可欠という立場で、積極的な振興策を取っています。

 自公政府の「農政改革」は、こうした世界の動きにも逆行する暴挙です。その背景には、食料・農業を新たなもうけ口にするために、新自由主義的政策を徹底させ、全面自由化と予算の大幅削減をもとめる財界の意向があります。

廃案で地域農業守ろう

 日本共産党は、このような無謀な「農政改革」を中止し、関連法案を廃案にすることを主張します。

 世界最低水準の食料自給率を向上させるためには、多くの農家と地域の生産が維持されなければなりません。そのためには、いまある農家、集落営農を大事な生産の担い手として位置づけること、生産者価格の安定・下支えを確立することです。

 私たちは、それを基本に、安全な食料の供給と地域社会、国土・環境の維持を優先する農政の確立にむけて力をつくします。


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