2006年5月15日(月)「しんぶん赤旗」

旧同和地区を調査

学力テストを他地域と比較 中止求め住民提訴

「新たな部落民づくり」の批判

大阪府


 同和問題に対する国の特別措置法が二〇〇二年三月に失効して四年。「同和地区」はすでになくなっているにもかかわらず、大阪府と府教委が「学力テスト」を利用して旧「同和地区」の子どもたちの実態調査をしようとしています。「行政による新たな部落民づくりだ」との声があがっています。

 この問題では大阪教職員組合が実施反対の運動をすすめている一方、対象地区住民とされた保護者が実施の差し止めなどを求めて裁判に立ちあがっています。

 問題の調査は「同和問題は解決していない」とする府同和対策審議会答申(二〇〇一年)に基づき、旧「同和地区」の児童生徒の学力を把握し、「一般施策をより効果的におこなっていくため」に実施するとしています。

 具体的には、四月から五月にかけて小学六年生と中学三年生の全員を対象に行う学力・生活調査(大阪市を除く)のなかから旧「同和地区」の児童生徒を抜き出し、他の地域と比較調査します。しかも本人や保護者の同意を得ず、教職員にも秘密にし、学校の一部管理職が子どもの住所データを提出。府の人権室が保有する旧「同和地区」住所とつきあわせ、子どもを特定します。

 訴訟をおこした十人の原告の一人の父親は「いまは特別な地域ではなく、一般府民としてなんの垣根もありません。それなのに行政が新たに『部落民』とレッテルを張ることになる。プライバシーの侵害です」と憤慨します。

 民主主義と人権を守る府民連合(民権連)の東延委員長は「府人権室がすでになくなっている旧『同和地区』の住所をいまだに持っていることがおかしい。廃棄・消去されるべきものです。あってはならないとしてきた同和地区を示す『地名総鑑』を府教委自身がつくることになる」と批判します。


「解同」の要求に応え新たな差別探し

 旧「同和地区」の実態調査をしても府がいうような同和問題解決の課題などは出てきません。

府自身認める

 二〇〇〇年に大阪府が実施した実態調査では「同和地区」内の三分の二が地区外からの来住者です。高学歴・高収入層が流出し、低所得・低学歴層の流入が増加し、三十歳未満の若い世代では地区出身でない配偶者との結婚が約七割を占めています。

 府教委が三年前にも実施していた同和実態調査の結果について、民権連に「府全体に比して顕著な差は見られない」「調査には限界がある」と、府自身が認めています。

 それにもかかわらず府教委は今回の問題で、旧「同和地区」内に今年四月に引っ越してきた児童も同和問題の調査対象となると民権連にのべています。また、これまでは同和地区住民かどうかを「解同」(部落解放同盟)が事実上牛耳る大阪府同和事業促進協議会(府同促)以外の団体・組織が認定するのは差別だとして、行政もそれに従ってきたのに、今回、行政が認定することは「差別にはならない」とつじつまのあわない姿勢に終始しています。これだけ問題の多い調査をなぜ行うのか。それは「解同」(部落解放同盟)の不当な要求に府が従っているからです。

補助出すため

 民主主義と人権を守る府民連合(民権連)の東延委員長は、「『差別』を口実に利権・特権を要求する『解同』一部幹部の要求に応えて差別探しをするというのが、本当の目的です。特別措置法の失効後、『同和』を冠した個人給付はなくなり、残るのは『解同』が事実上牛耳る『人権協会』への補助金です。補助金をだすためには“まだ課題がある”という名目をつくらねばならないということです」と指摘します。

 日本共産党府議団の調べでは二〇〇六年度も、事実上の同和対策事業が二十八事業十八億円計上されています。

 今回の同和実態調査について、府の個人情報保護審議会は、本人の同意なしで情報を提供できるとし、府教委は関係する二十二市町に協力を要請しています。十一日現在、審議会が住所データの提出には不同意としている吹田市をのぞく二十一市町で協力を表明しています。和泉市では市は協力を表明していますが、審議会は条例に抵触する恐れがあるとの意見をだしています。

 一方、同和実態調査を行わない大阪市では、この八日に市開発公社から駐車場の管理・運営を委託されていた財団法人飛鳥会の理事長で「解同」飛鳥支部の支部長が業務上横領容疑で逮捕されました。「解同」系の「芦原病院」の補助金不正流用疑惑も明らかになっています。これらの問題は日本共産党市議団が長年にわたって不公正・乱脈な同和行政の実態を明らかにし、「解同」の利権あさりを追及してきたものです。

 東委員長はいいます。「同和実態調査の問題は、『解同』の利権・特権と同和行政に決着をつけるという位置付けをして裁判を支援し、府を徹底追及していきたい」


 特別措置法 住環境など同和地区内外の格差解消を目的に一九六九年同和対策事業特別措置法が施行されました。以来、三つの特別措置法が施行され、同和行政実施の根拠となってきました。「格差はほぼ解消された」などとして〇二年三月失効。行政の実施の根拠も法的根拠もなくなりました。


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