2006年5月14日(日)「しんぶん赤旗」

冷蔵庫 JIS測定方法を改正

消費電力

消費者あざむく 宣伝くり返さない対策を


 電気冷蔵庫の電気代が画期的に安くなったといって、国・業界をあげて買い替えキャンペーンを行ってきました。その結果、年間約五百万台もの家庭用冷蔵庫が販売されてきました。

 ところが、年間電気代三千―四千円台といって販売していたものが、実際は一万数千円もの電気代を要していたのです。消費者に与えた損害、省エネといいながら、環境への悪影響ははかりしれません。

カタログ発行して

 経産省資源エネルギー庁の外郭団体、財団法人・省エネルギーセンターは、冊子『家電製品の省エネ性能カタログ』を半年に一回発行しています。二〇〇五年六月発行の「2005年夏」版までは、実態とは大きく異なる「JIS年間消費電力量」をもとに省エネ性能ランキングを一覧表に。「独自算出値」として、年間消費電力量(kWh/年)に22円/kWhを掛けて、「年間電気代」を掲載。「電気代にすると1年間で約11、000円お得!」などと買い替えをすすめていました。

 たとえば同冊子で、「JIS年間消費電力量」190×22円、「年間電気代」4180円とされていた松下電器産業の冷蔵庫(定格内容積498リットル)。今回公表された「新年間消費電力量」では、840kWh/年、年間電気代は1万8480円になります。

 また、JIS年間消費電力量260×22円、年間電気代5720円とされていた日立の冷蔵庫(定格内容積435リットル)。新年間消費電力量は790kWh/年で、1万7380円になります。

 この消費者をあざむく『カタログ』は国から委託された事業の一環で、税金で作成されてきたものです。『カタログ』を担当する省エネルギーセンター調査第一部は、「あの時点でのJIS測定方法での年間消費電力量に、電力料金目安単価を掛けただけ。2006年夏版をいま、準備中。改正JISに合わせて、新年間消費電力量を掲載し、ランキングする。年間電気代は今回は表示しない予定」といい、消費者をあざむいてきたことへの反省はありません。

 大手家電メーカー各社も、カタログやホームページで、「10年前と比べて、約〇〇%も省エネ」と誇示。電気代が大幅に安くなるかのように示し、「家計から環境まで配慮した冷蔵庫」と大宣伝して、新製品への買い替え促進をはかりました。カタログからこうした宣伝が削除されたのは、本紙報道の後、昨年六月以降です。

 日本電機工業会家電部の冷蔵庫担当者は、「旧JIS測定方法では、実使用を反映しないことがわかってきました。消費者に誤認を与える懸念があるので、昨年六月くらいから電気代を削除し、使用条件により消費電力量が『約1から○倍』というように変動することを表示するようにしました。いろんなところから指摘を受け、対応してきました。それが今回のJIS改正につながったと理解しています」と話します。

適正な情報提供を

 家電製品等の小売事業者による新たな省エネ情報提供制度は、経済産業相の諮問機関、総合資源エネルギー調査会省エネルギー基準部会のもとで審議中です。電気冷蔵庫などにみられたような、消費者をあざむくことが二度と起こらない対策が求められます。

 家庭での消費電力量を定期的に実測し、乖離(かいり)があれば直ちに測定方法を見直すなど、消費者に対し適正な省エネ情報を提供・公開することが不可欠です。そのうえで、より分かりやすい情報提供がおこなわれ、省エネに向けての真剣な取り組みがいまこそ求められています。(中東 久直)


電気冷蔵庫の消費電力量表示値変更に

家電メーカー型式
(機種名)
定格内容積
(L)
新年間消費電力量
(kWh/年)(5月1日から)
旧JISによる年間消費電力量
(kWh/年)(4月30日まで)
松下電器産業NR-F501A498840
(1万8480円)
190
(4180円)
NR-F450T445670
(1万4740円)
170
(3740円)
三菱電機MR-G45J448740
(1万6280円)
180
(3960円)
日立アプライアンスR-SF42VM415600
(1万3200円)
180
(3960円)
R-SF44TPAM435790
(1万7380円)
260
(5720円)
シャープSJ-HV42K416590
(1万2980円)
160
(3520円)
東芝コンシューママーケティングGR-W50FB498700
(1万5400円)
180
(3960円)
三洋電機SR-FS44K435570
(1万2540円)
160
(3520円)

各社の「新消費電力量データ」と従来のカタログなどをもとに作成。カッコ内は年間電気代。「電力料金目安単価」は22円/kWhで計算


JIS 主な改正点

 今回のJIS改正の主な点は次の通りです。

 (1)冷蔵庫の周囲温度をいままでの一点(25℃±1℃)だけでの測定から、二点(30℃±1℃および15℃±1℃)に変更。15℃(冬)および30℃(夏)の二点で測定した場合、いままでの一点での温度設定(25℃)では作動しない機能(野菜室の凍結防止などに使われる温度補償用ヒータ等)が作動する

 (2)冷蔵室および冷凍室それぞれの容積に応じて、水の入ったペットボトルなどを入れる

 (3)自動製氷機能、脱臭機能などの付加機能を作動させる

 (4)設置条件を側壁(擬似壁)と冷蔵庫の距離をいままでの30センチから5センチに。壁から反射される熱の影響を考慮した

 (5)扉開閉は冷凍室8回・冷蔵室25回から、冷凍室8回・冷蔵室35回に


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