2006年5月14日(日)「しんぶん赤旗」
国民説得は「難題」
米軍再編で与党 にじむ危機感
衆参本会議質問
政府は衆参の本会議(十一―十二日)で、在日米軍再編の「最終報告」(一日)について報告し、各党の質疑が行われました。自民・公明の与党議員からは、再編計画の推進を求めながらも、基地を抱える自治体や国民の強い批判への危機感がにじんだ質問が相次ぎました。
「内外の難しい問題の調整に尽力した努力に敬意を表したい」(自民党の福島啓史郎参院議員、十二日)「政治的指導力の発揮を評価したい」(公明党の高野博師参院議員、同)―。
すべての与党議員は、再編合意にこぎつけた政府に賛辞を送りました。しかし、安心した表情はありません。
公明党の佐藤茂樹衆院議員は「最終報告の発表は、在日米軍再編の終着点ではなく、あくまでも出発点だ」と強調。「政府の真価が本当に問われるのは、米国との合意を実施に移していく今後の過程であり、円滑に合意事項を達成するためには、政府が国民に対する説明責任を十二分に果たすことが不可欠だ」と力説しました(十一日)。
◆「危ぐの声ある」
多くの与党議員が国民への“説得”を求めたのは、三兆円にも上るとされる巨額の再編経費負担です。
「相当額の経費を要する。納税者たる国民に説明責任を果たしていかなければ、再編が実現しない」
自民党の寺田稔衆院議員は、こう危機感をのぞかせました(十一日)。
佐藤氏も「(再編経費は)極めて高額になる」「政府として、おおよその数字を示すことが、税金を負担する国民の理解を得る第一歩だ」と求めました。
こうした巨額の経費をつぎ込む再編計画は、米軍と自衛隊が地球規模で共同作戦を可能にする態勢づくりを具体化するものです。
高野氏は「米軍再編による米軍と自衛隊の融合を危ぐする声もある」と指摘。内閣府の世論調査(四月)でも、45%が日本が戦争に巻き込まれる「危険がある」と不安を示していることをあげ、「政府は、このような懸念を払しょくするよう努力すべきだ」と求めました。
再編合意が盛り込む、全国の米軍・自衛隊基地の強化計画には、関係自治体が「基地の恒久化につながる」などと、一斉に反対の声を上げています。
高野氏は「基地との共存を図ることは大変な難題だ」と地元説得の困難さを認め、福島氏は「抜本的な地元振興策を打ちだし、関係自治体の理解を得るよういっそう努力を」と、“アメ”による説得を求めました。
◆民主党は後押し
一方、民主党は、三兆円負担を批判するものの、「同盟関係における補完的な役割分担は必要」(十二日、浅尾慶一郎参院議員)と述べ、地球規模での共同作戦態勢づくりを後押しする姿勢を示しました。横須賀基地への原子力空母の配備については「地元自治体の了承を求める努力の継続を」(同)と、神奈川県や横須賀市への“説得”を求めました。
これに対し日本共産党の赤嶺政賢衆院議員は、巨額の再編経費負担について「『構造改革』の名で相次ぐ国民負担増と社会保障切り捨てを進めながら、米軍には湯水のように血税を投入するのか」と批判。米軍再編の狙いについて「米国の先制攻撃戦略に同盟国をいっそう深く組み込み、米軍と自衛隊が一体となって世界のあらゆる地域に乗り出していくものだ」と述べ、「こうした日米軍事同盟の再編・強化に対し、全国各地で自治体ぐるみの反対の声が巻き起こっている。この声を正面から受け止めよ」と求めました。(田中一郎)
在日米軍再編「最終報告」 一日にワシントンで開かれた、日米の外交・軍事担当閣僚による協議(2プラス2)で決定された「再編実施のための日米のロードマップ」と題する合意文書。その際、在日米軍再編によって日米同盟は「新たな段階に入る」との「共同発表」文書も出され、米国の先制攻撃戦略に基づいて日米の軍事的な協力体制を地球規模に拡大する狙いが示されました。この再編で日本側が負担する経費について米高官は約三兆円に達することを明言しています。