2006年5月13日(土)「しんぶん赤旗」

政府 「確認書」たてに新基地推進

沖縄県民の声は「反対」


 政府は、十一日に沖縄県の稲嶺恵一知事と額賀福志郎防衛庁長官が交わした沖縄の米軍再編に関する「基本確認書」に基づいて、米海兵隊普天間基地に代わるキャンプ・シュワブ(同県名護市)沿岸部への新基地建設を進めていくための閣議決定に向け動きを強めています。しかし、沖縄県民の圧倒的多数の声は、新基地建設反対です。

19日にも閣議決定

 稲嶺知事 (米軍基地の)返還があれば跡地利用や雇用対策など難しい問題がある。現行法で対応できない面もあるので考えてほしい。

 小泉純一郎首相 政府を挙げて誠意をもって対応する。

 十一日午後、小泉首相は、新基地建設について「政府案を基本にして対応する」などとした「基本確認書」に署名した稲嶺知事と会談。米軍再編を推進するための「新法」まで示唆して、新基地建設に強い意欲を示しました。

 稲嶺知事は四月に上京した際は「首相とお会いする状況にはない」としていましたが、政府は執拗(しつよう)に首相と知事の「トップ会談」を求め、今回実現させました。

 政府は「確認書」での合意と今回の会談を受け、新基地建設に関する政府と沖縄県や名護市などとの協議機関設置や、米軍再編に関連する自治体への「振興」策を盛り込んだ閣議決定を十九日にも行う方向で検討に入ったと報じられています。

 額賀防衛庁長官は十二日、来週中に稲嶺知事や島袋吉和名護市長と閣議決定に向けた協議をする考えを示しました。

 普天間基地に代わる新基地建設では一九九九年十二月の閣議決定で建設場所を「名護市辺野古」沖としています。今回狙う閣議決定では、稲嶺知事や島袋市長の同意を取り付け、建設場所を「キャンプ・シュワブ沿岸部」と明記し、先の決定を取り消す意向です。

 閣議決定を急ぐ背景には、六月の日米首脳会談への“手土産”にする意図も透けて見えます。

県の提案は対象外

 一方、稲嶺知事は十一日の額賀長官との共同会見で「政府案に同意したのか」と聞かれ、「まったく違う」と否定しました。県の独自案である「キャンプ・シュワブ陸上暫定へリポート案」も堅持する意向です。

 また島袋市長はすでに、V字形滑走路を持った新基地建設について額賀長官との「基本合意書」に署名(四月七日)していますが、地元で猛反発を受け、「千八百メートルという滑走路の長さには合意していない」としています。

 しかし政府は、稲嶺知事との「確認書」について「大きな一歩」(安倍晋三官房長官)と絶賛。防衛庁の守屋武昌事務次官は「(政府案を基本とする)確認書がすべてだ」として、沖縄県の提案は検討の対象外とする強硬な姿勢を示しています。

危険性はそのまま

 「危険性は放置されたままだ」―。十一日午前、稲嶺知事と入れ違いに防衛庁を訪れた宜野湾市の伊波洋一市長は、「確認書」に憤りました。

 普天間基地所属のヘリ部隊が同市上空を昼夜の区別なく旋回し、市民は爆音と墜落の恐怖にさらされています。伊波市長は「普天間基地問題の原点は、同基地の危険性の除去と沖縄の基地負担の軽減にある」と主張します。

 しかし、政府案は普天間基地の機能を県内に固定化し、さらに強化するものです。仮に計画通りに二〇一四年に新基地が完成しても、それまでの期間、宜野湾市民は危険にさらされ続け、それ以降はキャンプ・シュワブ周辺住民にその危険が「移転」されるだけです。

 沖縄県民の世論調査によると、新基地の政府案に反対は七割を超え、普天間基地の県外や国外移転、即時無条件返還が八割近くに達しています(琉球新報四月十四日付)。「(沖縄県民の)民意は政府案に反対」(沖縄タイムス五月十二日付社説)なのです。(竹下 岳)


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp