2006年5月12日(金)「しんぶん赤旗」

ナチによる少数民族虐殺

独で追悼碑を建設へ

政府が2億円余を拠出


 【ベルリン=中村美弥子】ドイツのノイマン文化担当国務相とロゼ独シンティ・ロマ(ジプシー)中央協議会議長は九日、ナチ政権下で虐殺されたシンティ・ロマを追悼する碑文の内容で一致し、碑を建設することで最終的に合意したと発表しました。碑文の内容をめぐって長年議論が続いてきましたが、ようやく両者が合意にこぎつけました。

 政府は追悼碑の建設に二百万ユーロ(約二億八千万円)を拠出します。追悼碑のデザインはイスラエル人彫刻家ダニ・カラバン氏が担当、噴水の形になるといいます。土地はベルリン市が提供し、連邦議会議事堂とブランデンブルク門の間に設置されます。

 追悼碑には複数の刻盤が取り付けられる予定です。一枚の刻盤にはナチの強制収容所の名前が刻まれます。別の刻盤には、「ナチ占領下の欧州で組織的大虐殺の犠牲になったすべてのロマを追悼する」と刻まれます。

 さらにもう一枚の刻盤には、ナチによるシンティ・ロマ虐殺の年表が記され、その下にシュミット元首相とヘルツォーク元大統領の言葉が刻まれます。

 シュミット元首相は一九八二年の演説で、シンティ・ロマの殺害を虐殺だと断言。ヘルツォーク元大統領は九七年、ナチによるシンティ・ロマの絶滅政策とユダヤ人のホロコーストは同じ問題だと指摘しました。

 ロゼ議長は「少数民族に対する虐殺があったことを認める重要な一歩だ」と述べ、追悼碑設置で政府と合意したことを喜びました。

 ノイマン文化担当国務相は、連立政権を組む社会民主党の了承を得られれば、すぐにでも追悼碑設置に動き出したいとの意向を示しました。


 ナチスのシンティ・ロマ迫害 ナチスのホロコーストではユダヤ人をはじめ、政治犯、同性愛者などさまざまな人たちが犠牲になりました。ナチスが「ツィゴイネル」(ジプシー)と呼んだシンティ・ロマの人たちも虐殺されました。ドイツばかりでなく、旧ソ連などナチス・ドイツの占領地域からシンティ・ロマの人たちが集められ、強制・絶滅収容所などで殺され、その数は一説によると五十万人ともいわれます。

 シンティ・ロマ シンティとはドイツ語圏に住むロマのこと。ロマはインド北西部に起源を持つ移動性民族で、言語のロマニー語はインド・ヨーロッパ語族の一つ。「ロマ」は人間の意味です。かつて使われたジプシーとは「エジプトからきた人(エジプシャン)」が語源で、差別的に使用されてきたため、現在は使われていません。ロマは現在、定住者も多く、欧州、西アジア、北アフリカなどで暮らしています。


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