2006年5月12日(金)「しんぶん赤旗」
国会の視点
教育基本法特別委の設置
国民に知られる前に
180度転換の改悪狙う
自民・公明の与党は十一日の衆院本会議で「教育基本法に関する特別委員会」の設置を日本共産党をはじめ野党の反対を押し切って強行しました。国会会期は六月十八日まで残り一カ月余り。この時点で特別委員会を設置し、憲法に準ずる教育基本法を一気に改悪しようというのは、歴史的暴挙と言わざるを得ません。
連日でも審議可
所管の衆院文部科学委員会で審議せずに特別委員会を設置したのは、今国会成立を狙っているからです。特別委員会なら定例日にかかわりなく連日でも審議ができ、スピード成立が可能です。国民に悪法の内容を知られる前に終わらせてしまおうという思惑です。
そもそも教育基本法の改悪内容が明らかになったのは、つい先月のことです。法案の元になった与党合意の内容が明らかになったのは四月十三日、政府法案が明らかになったのは閣議決定の四月二十八日です。
与党は、「与党協議会・検討会」で三年間、七十一回も議論したと言いますが、これはまったく身勝手な言い分です。与党協議は非公開で議事録もない完全な密室協議でした。与党が法案をまとめたから、国会はただちに審議して結論を出せというのでは「あまりにも議会制民主主義を軽視するものであり、認められない」(穀田恵二国対委員長)のは当然です。
しかもその内容は、権力による教育の不当な支配を否定する「教育の自主性保障法案」から、政府に都合のいい「教育の権力統制正当化法案」への百八十度の転換です(日本教育法学会特別委員会のコメント)。
立正大学の浪本勝年教授は「政府の教育基本法改悪案は震度10の超激震だ。天地がひっくり返るような内容だ」と批判します。憲法に準じる教育基本法を百八十度転換する内容を、公表してからわずか二カ月で押し通そうというのは絶対に許されません。
解決に役立たず
改悪案には国民の意見も何ら反映されていません。
政府は新しい時代にふさわしい基本法と言いますが、明治大学の三上昭彦教授は「世界人権宣言や子どもの権利条約など、国際的な準則の一連の発展をなんらとりいれていない。二十一世紀に向けた新しさはほとんどない」と批判します。
いわゆる学校の荒れや学力の問題、高い学費により進学断念や中退者の増加など、国民が解決を願っている問題には全く役立つどころか、ひどくするものです。
政府・与党の狙いを阻止するために世論と運動を急速に広げることが求められます。(北村隆志)