2006年5月12日(金)「しんぶん赤旗」

主張

イラン核問題

外交解決に軍事脅迫は有害だ


 イランの核開発をめぐり、国際原子力機関(IAEA)が「純粋に平和目的である」と見るには「信頼性の欠如」があると「重大な懸念」を表明し、これを受けて国連安全保障理事会が「三十日」以内にウラン濃縮をやめるようイランに求めてから一カ月半近くになります。

 イランに核計画をやめさせるための安保理の新しい決議案をめぐり、安保理常任理事国(米英仏中ロ)と独の六カ国による協議が行われており、独仏英の欧州三国が中心になって、新たな包括的提案を協議する動きも浮上しています。

平和的な解決が重要

 イランはウランの濃縮作業を続けており、核開発はあくまでも平和利用のためだと主張していますが、高濃縮ウランは核兵器製造の原料にもなります。核開発が核兵器製造につながらないことを証明するには、IAEAの検証活動など国際的な枠組みを受け入れ、国際社会の納得を得る必要があります。

 現に昨年までは、イランがIAEAの検証活動を受け入れ、欧州三国との協議も続いていました。ところが、核開発が平和目的に限られると十分明確にさせられないうちに協議は打ち切られ、イランがウラン濃縮を再開したため、大きな国際問題になってきたのです。

 問題の解決はあくまで平和的な外交交渉のなかで粘り強く行われることを、世界の人々は強く望んでいます。懸念されるのは、イランが自らの主張が認められないと、国際的な枠組みから離脱したり、アメリカなど一部の国が国際的な合意形成から外れて、軍事力を行使した制裁などに踏み切ることです。

 とくにアメリカは、ブッシュ米大統領自身が、イランの核問題への「最初のもっとも重要な選択肢は外交だ」といいつつ、イラク戦争を引き合いに出して、「大統領として米軍投入という厳しい選択をしなければならなかった」と、イランでも、軍事力行使の選択肢がありうることを示唆しています。

 ブッシュ大統領は、「明白なことは、外交を作動させる構成部分に、イランが世界の合理的な要求を聞かないならどういう結果になるかということがある」とのべ、「適切な時期に、米国の意図がどういうものかはっきりさせる」と、軍事力行使をちらつかせてさえいます。

 中東の大国であるイランでアメリカが軍事力を行使すれば、中東と世界の平和を破壊し、イラク戦争以上の泥沼に陥ることは目に見えています。こうした軍事力をちらつかせた脅迫そのものが外交的な努力を困難にし、解決を長引かせることになります。

 大量破壊兵器の査察が行われ、国際的な枠組みでの解決が模索されていたのに、アメリカが「有志連合」を率いて一方的に攻撃したイラクの悲惨な事態は、軍事力では問題が解決できないことを証明しています。国際紛争であっても平和的に解決すべきで、武力による威嚇やその行使を戒めるというのが国連憲章の原則です。イランの核問題の解決にあたってもこの立場を貫くべきです。

日本政府にも責任

 日本政府は、アメリカがイラクを攻撃したさい、アメリカを支持し、「有志連合」に加わって、侵略に手を貸すという誤りを犯しました。

 イランの核問題にあたって、この問題を平和的・外交的に解決するために力をつくすとともに、そのためにもアメリカの軍事脅迫の有害さを明確に主張していくかどうかが、日本政府に問われる大きな責任です。


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