2006年5月11日(木)「しんぶん赤旗」

教育基本法改悪反対の中央行動

市田書記局長のあいさつ(要旨)


 十日、東京・日比谷野外音楽堂で開かれた「教育基本法改悪反対5・10中央行動」で、日本共産党の市田忠義書記局長がおこなった連帯あいさつ(要旨)は次のとおりです。


写真

(写真)連帯あいさつをする市田書記局長

 お集まりのみなさん、そして、全国の草の根で教育基本法改悪に反対してがんばっておられるすべてのみなさんに日本共産党を代表して心から激励と連帯のあいさつをおくります。

なぜ変えるのか

 なぜ教育基本法を変えなければならないのか。政府は「時代の要請にこたえる教育の基本を確立するため」と説明しています。法案をまとめた公明党によると「時代の要請」とは「制定当時には想定されていなかった児童虐待やニート、フリーターの増加、いじめ、校内暴力、不登校や学級崩壊の多発など教育現場、教育をめぐる環境の激変」にこたえることにあるといいます。

 安倍官房長官は「ホリエモンが成功したのは小泉改革のおかげ」と言っていたのに、彼が逮捕されると、「やっぱり教育の結果だ」「教育基本法は改正しなければならない」「国を愛する心を涵養(かんよう)する教育をしっかり書き込んでいきたい」(「毎日」2月17日付)とのべました。自民党の武部幹事長は、今年一月、耐震強度偽装事件などを例に「日本は精神的に非常に退廃してしまった。教育を見直さなければならず、教育基本法改正も今国会でと思っている」(「産経」1月16日付)と発言しました。

 自民党などに道徳を口にする資格があるでしょうか。非道徳的な汚職・腐敗事件を繰り返してきたのは自分たちではありませんか。

 もっと驚いたことがあります。四月十六日のテレビ討論会で公明党の冬柴幹事長は、“早稲田大学の新入生の多くが「将来に希望が持てない」とこたえたことについてどう思うか”と司会者から問われて、それも教育のせいだと発言しました。

 ライブドア事件も、耐震強度偽装事件も、若者が将来に希望が持てないのも、みんな教育基本法の責任だというのです。これらは小泉政治がもたらしたモラルもルールもない「弱肉強食」「勝ち組・負け組」社会の結果ではありませんか。

基本法を生かし

 国民が切実に願っていることは、いわゆる学校の荒れや学力の問題、高い学費のために進学の断念や中退者が増える問題など、教育がかかえる諸問題を、政治はもちろん、教師や父母はじめ社会全体が力をあわせ、おおもとから解決することです。

 教育の分野で大事なことはなんでしょうか。それは、一人ひとりの子どもを大事にする、行き届いた教育をするための少人数学級の実現、経済的格差や社会的格差を教育に持ち込まず、だれもが等しく教育を受ける権利を保障することです。教師が子どもたちや父母とまっすぐに向き合い、子どもたちの健やかな成長のために心を砕くことができるようにすることです。

 これこそ教育基本法のめざすものです。子どもたちが「平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたっとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民」としての人格の完成をしていくことが、よりよき日本、平和な日本をつくるなによりの基礎とされているのです。

根底から覆す

 これを根底から覆すのがいま提案されている「教育基本法改悪案」です。

 現在の教育基本法はその目的を達成するために、第一に「学校の教員は、全体の奉仕者」とした第六条、第二に「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負」うとした第一〇条を定めています。

 これは戦前、“日本は神の国”“国のために命をささげよ”と教え、国民を侵略戦争にかりたてた痛苦の反省のもとにうちたてられたものです。教育は、政府や政党、その他どんな力にも左右されずに行われなければならず、教育に携わるものは外部の力に指図されることなく、国民全体に奉仕する自覚にたって教育にあたらなければならないとしたのです。

 政府の「教育基本法改悪案」はこの二つとも投げ捨てました。「教育は…この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきもの」としています。要するに、時々の政府がきめる「教育振興基本計画」どおりにやれということです。

 一人ひとりの子どもの人格の形成によって、よりよき国がつくられていくというのとはまったく反対に、時の政府に都合のよい子どもをいかにしてつくるか、このことを強引に推し進めようとしています。

「達成度」競わせ

 さらに政府案は、「愛国心」をはじめとする一連の「徳目」を新たに「教育の目標」としてかかげ、その「達成」を学校と教員に義務づけようとしています。

 日本共産党は、子どもの学力や体育、情操とともに、平和で民主的な社会の担い手にふさわしい市民道徳を身に付けるための教育を大切なものだと考えています。そこには「排外主義や他民族蔑視(べっし)でなく、真の愛国心と諸民族友好の精神」を培うことも含まれています。それは、憲法と教育基本法の平和・民主の原則からおのずから導き出されるものです。

 これは、日本社会の全体が健全な社会に前進する努力を傾けるなかで学校や教員と児童生徒、親たちの人間的で温かい信頼関係を通じてこそ豊かに実を結ぶものです。決して「達成度」を競うものではありません。

 政府案では“あの生徒の「愛国心」の達成度は不十分だ。いつまでにどこまでどう引き上げるか”“この学校の達成度は低すぎる。強力な指導が必要だ”ということになるのは明らかです。

 しかも、求められているのは態度です。子どもたちは具体的な態度を求められ、教師は求め方が問われます。

「愛国心」のねらい

 なぜ「愛国心」が「教育の目標」に入れられたのでしょうか。

 サッカーのワールドカップやWBC(ワールドベースボールクラシック)で、日本選手の活躍に日本中がわきたちました。それは国民の自然な気持ちです。ところが、それでは満足できないのが自民党など教育基本法改悪論者たちです。

 自民党の中では「いつまでも戦争の反省を教えているから愛国心が育たない」という議論が平然とまかり通っています。彼らのいう「愛国心」は、日本がおかした過去の戦争を「アジア解放のための正義の戦争」「自存自衛の戦争」だったという正当化と結びついています。

 日本が憲法九条を堅持し、一人たりとも殺さず、殺されずにきたのは、「教え子に再び銃を取らせない」と誓った教職員組合運動の言葉に代表されるように、過去の戦争への深い反省とそれを具体化した、憲法と教育基本法が支えでした。

 憲法改悪のねらいは、日本を再び「海外で戦争をする国」につくりかえることにあります。その策動がいますすめられているさなかに、教育基本法をかえて「愛国心」を書き込むことは、結局「戦争をする国」に忠誠を尽くす国民をつくりだすためのものにほかなりません。

 日本共産党は、子どもと教育の問題に心を痛めるすべてのみなさん、平和と人権、民主主義を大切にしようと願うすべてのみなさんと力をあわせて、教育基本法の改悪をやめさせるため、国会の内外で全力をつくす決意です。


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