2006年5月11日(木)「しんぶん赤旗」
米軍再編 3兆円負担
政府・与党 打ち消しに躍起だが…
日本側が見積もり・提示
日米両政府が「最終報告」を取りまとめた在日米軍再編にかかる経費の日本側負担を約三兆円(約二百六十億ドル)と明言したローレス米国防副次官の発言(四月二十五日)に対し、政府・与党は火消しに躍起になっています。しかし、日米双方の発言を検証してみると、実は日本側が三兆円相当の経費を見積もり、米側に提示していたことが浮かび上がってきます。(田中一郎)
三兆円と言えば、日本国民一人当たり約二万五千円、四人家族で約十万円の負担になります。ローレス氏の発言で広がった国民の批判に、政府・与党は一斉に打ち消しに回りました。
「勝手な数字」?
安倍晋三官房長官がローレス氏の発言の翌日(同二十六日)に「途方もない金額」と驚いてみせたのに続き、谷垣禎一財務相は「三兆円という数字が独り歩きしている。どういう根拠でこういう数字が出ているのか」(同二十八日)と発言。麻生太郎外相も「根拠が全然分からない」(同日)などと述べました。
さらに、今月に入り、久間章生自民党総務会長ら与党議員団が訪米し、ローレス氏と会談。その中で同氏が「(三兆円は)細かく積み上げた数字ではない」と述べた、と久間氏は宣伝しました。三兆円というのは「(米国の)勝手な計算」(山崎拓自民党前副総裁)というわけです。
ところが、こうした日本側の主張を覆したのはローレス氏でした。
ローレス氏は久間氏らとの会談後に、民放テレビのインタビュー(五日)に答え、自身の三兆円発言について「元になった情報は日本側から提供された」「日本の担当者は『残りの経費は海兵隊のグアム移転費用の二倍だ』と話していた」と明らかにしたのです。
グアム移転費の総額は約百億ドル(約一兆一千五百億円)です。日本側はそれ以外の在日米軍再編経費はグアム移転費の二倍と言ったので約二百億ドル(約二兆三千億円)になり、これにグアム移転費の日本負担分約六十億ドル(約七千億円)を加えれば総額では約二百六十億ドル(約三兆円)になるという計算です。「(米側の)勝手な計算」どころか、日本側が提示した情報をもとにした数字だったのです。
次官裏付け発言
実は日本側にも、このことを裏付ける発言があります。
防衛庁の守屋武昌事務次官がローレス氏の三兆円発言の前日に都内で行った講演です。
守屋氏は「グアム移転経費を除き(在日米軍再編経費の日本側負担は)二兆円と試算している」(「毎日」四月二十七日付)と述べました。これにグアム移転費を加えると、三兆円近い数字に達します。
日本共産党の緒方靖夫議員は九日の参院外交防衛委員会で、この守屋氏の発言を取り上げ、米側には試算額を説明しながら、日本国民には示そうとしない政府の姿勢を追及しました。
これに対し額賀福志郎防衛庁長官は「守屋次官が言っているのは(基地建設経費だけでなく)地域振興費だとか、いろんなことを統合していくと、それくらいかかるのかねという話」などと言い訳しながら、守屋氏が明らかにした試算額に「根拠がないといっているわけではない」と答弁し、同氏の発言を認めざるを得ませんでした。
米側には試算を示しながら、それが表に出ると必死に否定し、国会にもまともに説明しようとしない―。政府・与党の対米追従の異常さを際立たせるものです。