2006年5月11日(木)「しんぶん赤旗」

主張

医療改悪法案

“人の命もカネ次第”にするな


 小泉内閣の「医療制度改革」法案に、批判の声が広がっています。

 「いま以上の患者負担増は保険制度を壊す」「いわゆる『混合診療』導入は、国民皆保険制度を崩壊させる危険性が懸念される」―。参考人質疑や地方公聴会では、政府案への賛否の違いを超えて、公的医療制度解体への懸念が出されました。

突出する患者負担

 高齢者の窓口負担の引き上げについて、政府・与党は、「現役並みの所得のある高齢者には現役並みの三割の自己負担を」と負担増を正当化します。しかし、これまで高齢者の窓口負担を現役世代と比べて軽減してきたのは、現役並みの所得があるかどうかではなく、高齢者が病気にかかりやすく、治りにくいという理由からです。

 しかも、小泉内閣がこれまですすめてきた健保本人三割負担、高齢者への負担増など相次ぐ医療改悪で、ただでさえ日本の窓口負担は先進国のなかでも重すぎる水準となっています。公的医療保険における窓口負担割合は日本の16%に対し、イギリス2%、ドイツ6%、フランス11%です。「現役並みに値上げ」ではなく全体に引き下げこそ必要です。

 小泉内閣は、このまま医療費が増大すれば医療保険制度が破たんするといって脅かしています。しかし、参考人や公述人からは、医療費抑制という法案の眼目こそ、国民・住民の「医療にたいする不安を増大させる」という意見が出されました。地域医療を担う自治体病院の経営悪化や医師不足といった重大な問題もあります。

 日本の医療費はGDP(国内総生産)比で7・9%と先進国三十カ国中十七位です。いまでさえ低い水準なのに、これを抑えるために患者負担をさらに重くすれば、お金の払えない人は病院にも行けません。だれもが必要な医療を受けられてこそ、国民皆保険です。

 医療費抑制のための「混合診療」導入についても、「国民皆保険制度が実質的に崩れることになる」と批判が相次ぎました。

 政府案は、「必要な医療はすべて保険でおこなう」という公的保険の原則を崩し、保険外診療と保険診療の併用を認める「混合診療」の本格的導入を盛り込んでいます。これまでは高額な医療費を請求される「混合診療」は、「差額ベッド代」など例外的にしか認められていませんでした。これを「高度医療技術その他」や長期入院患者を対象にした「生活療養」などに拡大するというのです。

 「高度医療技術その他」に拡大していく点について、小泉首相は、「全部保険でみるといったらどれだけのお金がかかるのか」(三月三日の参院決算委員会)とのべ、“必要な医療はすべて保険でおこなう”という公的保険の原則を崩す方向へ変質をはかることを明らかにしています。

 「生活療養」はその一つとして、療養病床に入院する高齢者の食事・居住費(水光熱費)を保険適用外とすることを盛り込んでいます。

 しかも、政府は、介護と医療の療養病床を今後六年間で、三十八万床から十五万床へと二十三万人分も減らします。「療養病床削減は社会的強制退院だ」と、悲痛な声があがっています。

国民的共同を広げよう

 医療大改悪にたいし、多くの医療団体、労働組合、市民団体、自治体関係者から、政治的立場をこえて強い批判があがっています。医療大改悪反対の一点で、国民的な共同をさらに広げていきましょう。


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp