2006年5月10日(水)「しんぶん赤旗」

選別採用と賃金半減

電機大手の雇用継続制度

法改正の原則に背く


 改正高年齢者雇用安定法にもとづいて、四月から六十五歳までの段階的な雇用継続が各企業に義務付けられています。しかし、「年金支給開始年齢までの安定した雇用の確保」という改正法の大原則に反して、選別雇用や労働条件を切り下げる企業が相次いでいます。電機大手の場合を見ると――。


対象者

 雇用延長は「希望者全員の雇用」が原則です。 松下電器や富士電機、三菱電機は「希望者全員」としていますが、選別的基準を設けている企業が目立ちます。

 東芝では希望者全員を原則としながら、およそ10%程度の労働者が選別対象になります。

 沖電気は、五段階評価のうち「3」以上の人はグループ内で再雇用し、それ以下はグループ外の企業に出されます。

 日立は「希望者と会社募集のマッチングができた者」としていますが、「希望者全員の雇用」という原則に反して、会社の都合で排除される仕組みになっています。

 厚労省パンフレットでは、労使で十分協議したものでも、「事業主が恣意(しい)的に継続雇用を排除しようとするなど本改正の趣旨や他の労働関係法規に反するものは認められない」としています。

 希望者全員を雇用するかどうかは企業によって理由は異なりますが、希望者全員を継続雇用する富士電機は「高い技術・技能・知識を持ち、ノウハウの蓄積のある高年齢者の活用もこれまで以上に求められる」としています。

選択時期と60歳までの賃金

 雇用延長の選択時期は早い場合は五十五歳で選択しなければならず、六十歳までの賃金も大幅にダウンします。

 東芝では、五十五歳で退職し、系列の高齢者雇用会社の社員になります。六十歳までの賃金は月約五万円(年収で約八十万円)ダウンします。

 五十代半ばでの選択は、将来の家族状況や健康面など不確定要素が多く、容易ではありません。職場からは「六十歳直前に選択できるようにすべきだ」との声があがっています。

60歳以降の賃金

 六十歳からの賃金は、ほとんどの企業で大幅にダウンしています。

 全員継続雇用の松下でも、年百八十万―三百万円(一時金含む)程度にしかなりません。「年金支給開始年齢までの生計維持」という改正法の趣旨に反します。

 雇用形態でも、「嘱託社員となり、一年ごとの契約更新」(東芝)など、六十五歳までの雇用継続が必ずしも保障されない可能性があります。

 NECでは雇用延長を選択すると、五十六歳から業務続行か、他の業務・部門への異動かに区分されます。異動先が見つからない場合、バイタルスタフというグループ会社に出向させられ、そこからグループ外へ派遣される恐れもあります。

 沖電気でも、評価が平均以下の人はグループ外企業に再就職先を探すことになります。

 改正法は、六十歳まで雇用されていた企業での継続雇用が原則です。それ以外の企業で雇用延長するときは、子会社で継続雇用が担保されている場合などです。グループ外での雇用延長は法違反の疑いがあります。

 選別雇用をめぐっては、厚労省が事業者向けに出したパンフレットで、「過去三年間の勤務評定がC(平均)以上の者」など、選別採用をすすめるような記述があったため労働者から追及され、削除されました。

 JMIU(全国金属情報機器労組)が行ったハローワークや労働基準監督署との交渉では、選別基準について、「恣意的な選別をまねく基準はまずい。早急に対処したい」(ハローワーク)、「問題があればハローワークと連携して対処したい」(労基署)などと答えています。

表

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