2006年5月10日(水)「しんぶん赤旗」

主張

「外交青書」

アジア外交の展望が見えない


 中国、韓国との関係は悪化したままです。日本外交のあり方が根本的に問われていますが、先月外務省が公表した二〇〇六年版「外交青書」には、アジア外交を積極的に打開する姿勢はありません。

 「日米関係は日本外交の要」といい、日米同盟強化を優先させる小泉政権の姿勢では、アジア外交を改善し、発展させる展望が見えないのも当然です。

根源は侵略戦争美化

 アジア外交を孤立させている原因は、小泉首相が靖国神社参拝を強行するなど侵略戦争を正当化しているからです。

 元駐米大使の栗山尚一氏は、小泉首相の参拝について、「『大東亜戦争』肯定の歴史観を共有しているとの印象を与える結果となりかねないので、控えるべき」(外務省編集協力外交専門誌『外交フォーラム』一月号)と批判しました。外交にたずさわる者として当然の主張です。

 「外交青書」は、中国が侵略戦争正当化をやめるよう提起していることについて、「政府としては、個別の分野での意見の相違が日中関係全体の発展の支障になってはならないとの立場」だとのべています。これは重大です。「アジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えた歴史の事実を謙虚に受けとめ」るといいながら、歴史認識を数ある外交課題のひとつにわい小化するのでは、侵略戦争の過ちを真摯(しんし)に反省しているとはいえません。

 小泉政権の侵略戦争正当化を批判するのは中国や韓国だけではありません。シンガポールのゴー・チョクトン上級相は「アジアはすべて日本にはくみしていない」「日本の指導者は靖国神社参拝をやめるべきだ」とのべています(第四回アジア太平洋円卓会議基調演説)。

 戦後のアジアと世界の国際関係は、日本やドイツの侵略戦争の反省の上に成り立っています。「外交青書」が国際関係の基盤をくつがえすなどあってはならないことです。

 小泉首相は、中国や韓国との首脳会談が開けないのは、靖国神社参拝を批判する両国に原因があるかのようにいいます。関係悪化の原因をつくりだしたのは小泉首相です。中国や韓国のせいにすべきではありません。これでは事態の打開どころか、ますます悪化させるだけです。靖国神社参拝をやめ、侵略戦争にたいする反省を具体的な形であらわしてこそ、関係修復につながります。

 「外交青書」が軍事偏重をつよめていることも重大です。

 北朝鮮脅威論にくわえて、「中国の軍事力の近代化や国防費の増大についても依然として不透明な部分がある」とはじめて書きました。両国を事実上の仮想敵国扱いにした「防衛計画の大綱」(二〇〇四年十二月)の立場をそのまま取り入れたものとして見過ごしにはできません。侵略戦争を正当化し、日米軍事同盟を侵略的に大変質させる政府が、こうした敵視政策を外交にもちこめば、アジアでの軍事緊張を高めることになるのはさけられません。

平和の流れを大きく

 世界、とりわけアジアは、紛争を戦争によってではなく平和的話し合いで解決する方向に進んでいます。十六カ国が参加した東アジア首脳会議など、東アジアの平和共同体を展望するとりくみも前進しています。この流れを加速することが、世界の平和にとって不可欠です。

 憲法の平和原則を生かして、平和の流れを加速する役割を果たすことがますます重要になっています。


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