2006年5月8日(月)「しんぶん赤旗」
教育基本法 改悪案
先導する公明党
党略優先“選挙ない年”
自民、公明両党が連休明けの審議入りを狙っている教育基本法改悪案。自民党関係者は「この問題が年明けから急に進んできた要因は公明党だ」と語ります。公明党は同法案を「時代が求める重要改革」と評価し、「今国会で必ず成立を」と主張しています(公明新聞四月二十六日付)。同党の果たした役割をみると―。
■決着つける
小坂憲次文科相が今国会への法案提出を目指すと初めて明言したのは、昨年十二月一日でした。誘い水となったのが、その二日前の公明党・神崎武法代表の発言でした。
「相違点は『国を愛する心』をどう表現するかの一点に集約している。表現をどうするのか最終調整した上で、次期通常国会で決着をつけることも考えていきたい」
この神崎発言を皮切りに、公明党の積極姿勢が目立つようになります。
三月からは党内論議を加速。「愛国心」をめぐる表記については(1)統治機構を愛するという趣旨ではないことを明確にする(2)「他国、国際社会の尊重」を盛り込む―との意見をまとめ、一月から再開されていた与党協議に反映させました。
そして四月十三日、「国を愛する態度」を養うことを教育の目標に掲げ、国家権力の教育へのいっそうの介入に道をひらく教育基本法改悪案の全条文について合意に達したのです。
この与党合意について、太田昭宏幹事長代行は公明新聞四月十五日付インタビューで、「現行法の理念を堅持」したと強調。愛国心についても「国家主義の懸念は払拭(ふっしょく)できた」などと誇っています。
■懸念ポーズ
今国会への法案提出を先導したのも公明党でした。自民党内が与党合意への“異論”噴出でざわついていると見るや、神崎代表が四月十九日、「参議院で自民党は過半数を割っている。自分たちだけで責任をもって法案を通せるというのであれば、どうぞご自由に」とクギを刺しました。東順治国対委員長も同月二十一日、大型連休前の閣議決定や特別委員会設置をいち早く提案しました。
公明党は教育基本法改悪について、自民党と「与党・教育基本法改正に関する協議会(検討会)」を設け、改悪案のレールを敷いてきた政党です。協議会(検討会)の名称にはもともと「改正」の文字が入っていませんでしたが、冬柴幹事長の提案で追加しました(〇四年一月)。それまでの議論段階から教育基本法改悪を目標にする機関へと変わったことを意味します。
公明党はこうした推進姿勢の一方で、「教育基本法の性格が教育憲法から教育勅語的なものに変化するとの指摘も看過できない」(公明新聞〇五年三月二十五日付主張)などと“懸念”を共有するポーズをとってきました。しかし、出てきた改悪案は、懸念通りの内容です。
今年十月には党大会での執行部の交代も取りざたされる公明党。自民党関係者は「とにかく秋や来年の通常国会に、この問題を先送りしたくないというのがある」といいます。見えてくるのは、政権与党としてのうま味は確保しつつ、国政選挙のない年に懸案を処理してしまおうという、党略的な思惑のみでは―。