2006年5月2日(火)「しんぶん赤旗」
医療改悪案 高齢者医療制度
「資格証明」の発行明記 滞納者の保険証を奪う
医療改悪法案で、七十五歳以上のすべての高齢者から保険料を徴収するとともに、滞納者から保険証をとりあげる「資格証明書」の発行を明記しました。医療を受ける権利を高齢者から奪う大改悪の非情な姿をあらためて浮きぼりにしています。
「資格証明書」は、国民健康保険料の滞納世帯に対する“ペナルティー”として発行されています。二〇〇五年六月時点で全国で約三十二万件です。発行されると、医療費をいったん窓口で全額支払わなければなりません。
たとえば、六十五歳の人が病気で通院し、五千円の医療費がかかった場合、本来ならば窓口負担は三割の千五百円です。「資格証明書」が発行されると、窓口で十割の五千円支払い、後で三千五百円戻ってくることになります。しかし、保険料滞納分にあてられることもあり、全額戻ってくるとは限りません。
「資格証明書」を発行された人が、医療費を払えないため受診を我慢して症状が悪化し、手遅れになるケースも出ています。
これまでは七十五歳以上の人や、六十五歳以上の寝たきりの人など「老人保健制度」の対象者は、国保料を滞納しても「資格証明書」の発行対象から除外されてきました(国保法第九条)。
新たな「高齢者医療制度」の創設(〇八年度)にともない、除外規定を撤廃。七十五歳以上の人も、保険料を滞納すれば、「資格証明書」の発行対象となります。
しかも、サラリーマンの子どもに扶養されて保険料を払っていなかった人(約二百万人)も含め、七十五歳以上の全高齢者が保険料を払わなければなりません。
七十五歳以上の高齢者は、他の世代に比べて有病率が高く、病院に通う回数も多くなります。窓口での患者負担も、他の世代より低い一割となっています。
七十五歳以上の高齢者にまで「資格証明書」が発行されることは、お金のあるなしで医療が受けられないという「命の格差」をさらに拡大することになります。