2006年5月2日(火)「しんぶん赤旗」

日米同盟「新段階」

米軍再編「最終報告」

アジアと世界の平和脅かす


 在日米軍再編計画の「最終報告」を一日深夜(日本時間)に取りまとめた日米安全保障協議委員会(2プラス2)は、「共同発表」で「再編案の実施により、同盟関係における協力は新たな段階に入る」と強調しました。しかしそれは、日本を海外“殴り込み”戦争の根拠地としていっそう強化し、米軍と自衛隊が一体となって地球規模で行動する“協力”であり、アジアと世界の平和を脅かすものです。(榎本好孝)


 2プラス2の「共同発表」は「(日米)同盟関係は、地域及び世界の安全保障環境における…将来の課題に対応するため、より深く、より幅広く、発展していく必要がある」と強調し、日米軍事同盟の地球規模での拡大・強化を表明。これを具体化する在日米軍再編計画の「最終報告」は、計画実施の「ロードマップ」(行程表)を示しました。

“殴り込み”強化

 その特徴の一つは、イラク戦争など地球規模での出撃を繰り返す、海外遠征を主な任務にした在日米軍部隊の“殴り込み”能力を一段と強化することです。

 沖縄の海兵隊については、二〇一四年までにキャンプ・シュワブ沿岸部にV字形の二本の滑走路を持った最新鋭の航空基地=新たな“殴り込み”拠点の建設を明記しました。同時に、第三海兵遠征軍(MEF)の司令部を中心にしたグアムへの移転も同年までに完了。グアム、沖縄、ハワイで海兵隊の一体的・機動的な運用を可能にします。

 さらに海軍では、同年までに厚木基地(神奈川県)の空母艦載機部隊を岩国基地(山口県)に移転。同基地に駐留している海兵隊の航空部隊と統合運用することで、戦闘能力を強化します。「最終報告」には書かれていないものの、海軍は、横須賀基地(神奈川県)の通常型空母キティホークを〇八年に原子力空母ジョージ・ワシントンに交代する計画も明らかにしています。

 加えて、キャンプ座間(神奈川県)には、イラクにも展開している最新鋭のストライカー旅団など米陸軍の“殴り込み”部隊を指揮する新しい戦闘司令部(UEX)を〇八年九月までに創設します。

自衛隊と一体化

 もう一つの特徴は、海外での米軍と自衛隊との共同作戦を可能にする態勢づくりです。2プラス2の「共同発表」は「自衛隊と米軍の相互運用性を向上することの重要性」を強調しています。

 具体的には、司令部機能の統合として、キャンプ座間に米陸軍の新戦闘司令部を創設するとともに、陸上自衛隊の海外派兵の計画・訓練・指揮を一元的に実施する中央即応集団司令部を一三年三月までに設置。在日米軍司令部や在日米空軍司令部のある横田基地(東京都)には、航空自衛隊の戦闘部隊を統括する航空総隊司令部を一一年三月までに移転するとともに、「共同統合作戦センター(運用調整所)」を設置し、日米両軍の統合運用を進めます。

 嘉手納(沖縄県)、岩国、三沢(青森県)の各基地に配備されている米軍機の訓練を日本本土の空自基地に〇七年四月から本格移転することをはじめ、共同訓練のための空自による嘉手納基地の使用なども、日米両軍の一体化を推し進めるのが狙いです。

費用3兆円負担

 重大なのは、こうした再編計画を実施するための費用について「明示されない限り日本国政府が負担するものである」と「最終報告」に明記し、大部分を日本側負担にしたことです。在日米軍再編の米側実務責任者であるローレス国防副次官は、日本側負担の総額が三兆円にも上ることを明らかにしています。

 2プラス2の「共同発表」は「(日米の)パートナーシップが、強固であり続けるためには、両国の国民一般の確固とした支持を引き続き得ることにより強化されなければならない」と述べています。

 しかし、在日米軍再編計画については「基地強化・恒久化につながる」として周辺自治体の圧倒的多数が反対しています。その上、基地の強化・恒久化のために三兆円もの巨額負担を負わされるとなれば、日本国民の反発は必至です。「確固とした支持」を得られるはずはありません。


■在日米軍再編の流れ
02年12月 2プラス2で日米の軍事態勢、在日米軍の兵力構成見直しを合意
03年11月 ブッシュ米大統領、「地球規模の米軍再編」で同盟国との協議を表明
04年 8月 ブッシュ大統領、今後10年以内に欧州を中心に6万〜7万の在外兵力引き揚げを表明
   12月 日本政府、新「防衛計画の大綱」を決定
05年 2月 2プラス2で日米「共通の戦略目標」を決定
   10月 米政府、原子力空母ワシントンの横須賀配備を発表
   10月 2プラス2で中間報告「日米同盟 未来のための変革と再編」を決定
06年 5月 2プラス2で最終報告「再編実施のための日米のロードマップ」を決定


 2プラス2 日米安保条約など安全保障分野での日米協力に関する問題を検討するために設置された協議機関。正式名称は、日米安全保障協議委員会(SCC)。構成員は、日本側が外相と防衛庁長官、米側は国務長官と国防長官です。


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