2006年4月30日(日)「しんぶん赤旗」
大銀行、サラ金と提携強化
高金利でおいしい分野
債権回収ノウハウ欲しい
違法な取り立てでアイフルが業務停止命令を受けるなどサラ金被害が広がっています。そのサラ金業界と銀行が資本提携を強め、事実上の一体化が進んでいます。(矢守一英)
「お財布感覚で出し入れ自由。いつでもどこでもあなたの強い味方です」―。三井住友銀行のATM(現金自動預払機)コーナーで手にしたサラ金の入会申込書。銀行内だけでなく全国のコンビニなどに設置されているATMでも契約できることを宣伝しています。
三井住友銀がサラ金のプロミスと事業を開始したのは昨年四月です。
例えば、同行でお金を借りる場合は、借り手のリスクに応じて次の三種類のローンが用意されることになります。
金利年8―12%の銀行のカードローン。15―18%と利息制限法の制限金利内のアットローン。18―25・55%のプロミスの三つです。20%を超える金利は利息制限法の上限金利を超えており、同法違反です。
しかし出資法では29・2%が上限金利であるため、その間の金利は罰則規定がなくグレーゾーンと呼ばれます。
こうした提携について銀行側は、「双方の培ってきたブランド、顧客基盤、ノウハウ、経験などの融合によってサービスを提供する」と説明。貸し出しの際の審査、債権管理、回収はプロミスが「支援」することもうたっています。
アイフルは、地方銀行や信用金庫などの金融機関と個人、事業者向けの無担保ローンの保証業務で提携を結んでいます。
サラ金各社に2%前後の低金利で資金を供給し、そのボロもうけを支える銀行が、ここへきてサラ金との提携を強めるねらいはどこにあるのでしょうか。
ある地方銀行関係者は「生き残りを目指す地方の銀行にとっては、新しい顧客を開拓し確保することが目的。サラ金側も銀行の看板を最大限に利用できる」と話します。
三菱東京UFJ銀行の現役行員はこういいます。「銀行がほしいのはサラ金の持つ与信(審査)や回収のノウハウです。それらを活用しながら、高金利で、おいしい分野に手を伸ばしたいということでしょう」
政府が後押し
銀行とサラ金業界の“蜜月”の関係には、政府の後押しがありました。
金融相の私的な懇話会「日本型金融システムと行政の将来ビジョン懇話会」が出した報告書(二〇〇二年七月)はこうのべています。
「消費者金融や商工ローンは、これまで金融機関において必ずしも主流の資金仲介チャネルとして位置付けられてこなかったが、リスクを的確に評価し管理する仕組みを独自に構築して収益を上げる点は、今後の金融業の目指すべき姿勢であり、積極的に評価する意識の転換が必要である」
サラ金や商工ローンの経営が銀行経営の模範だというのです。