2006年4月29日(土)「しんぶん赤旗」
主張
教育基本法改定案
愛国心入れるよこしまな狙い
小泉内閣が、今国会での成立をねらって、教育基本法改定案を閣議決定しました。
教育基本法は、「日本国憲法の精神に則り、教育の目的を明示」(教育基本法の前文)したものです。こんな大事な問題を、国会会期の残り三分の一という短い期間で一気に通すというやり方はあまりにも乱暴です。
教育内容への政治の介入
改定案の中身が重大です。現行の国民主権にたった国民の教育権を改定案は否定して、国家による「教育権」におきかえています。
第一〇条の改変です。現行法は、「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものである」(第一〇条一項)と明記しています。改定案は、ここにある「国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものである」を削除して、その代わりに、教育は「この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきもの」などを加えています。
現行法にある「国民全体に対し直接に責任を負って」というのは、教育が、その時々の政治的官僚的支配のもとにおかれるのではなく、子ども・保護者・住民など国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきだということです。これは、時の政治的支配に従って、教え子たちを戦場に送った、戦前の戦争教育の反省にたって、うちたてられた民主的原則です。
改定案が、この民主的原則を削除して、“法律の定め”におきかえることは、教育内容への行政の介入を法律で規定することになります。
現行法は、民主的道徳についてもその基礎を提示しています。
「個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間」(前文)、「平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたっとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民」(第一条)
日本共産党は、民主的道徳を身につけるための教育を三十年も前から一貫して重視してきました。その内容を、「人間の生命、たがいの人格と権利を尊重し、みんなのことを考える」「真実と正義を愛する心と、いっさいの暴力、うそやごまかしを許さない勇気をもつ」「社会の生産をささえる勤労の重要な意義を身につけ、勤労する人を尊敬する」など十項にまとめてきました。これらは、憲法と先にあげた教育基本法の精神から出てきます。その十項目に「他国を敵視したり、他民族をべっ視するのではなく、真の愛国心と諸民族友好の精神をつちかう」ことをあげています。
改定案は、教育の目標に、“国を愛する態度を養う”ことを盛り込みましたが、現行の教育基本法から当然導かれる内容をあえて書き込むところに、よこしまなねらいを感じないわけにはいきません。
憲法改悪と結びついて
教育基本法の改定は、憲法九条の改定と連動しています。主権者として一人ひとりの子どもの「人格の完成」を目的とする教育から、憲法改悪がめざす「海外で戦争する国」にふさわしい人間を育て上げる教育への変質をはかろうとしています。こうしたねらいをもって、教育基本法に“国を愛する態度”が盛り込まれれば、第一〇条改定とむすびついて、特定の政治的立場にたつ「愛国心」を教育現場におしつけ、憲法に保障された内心の自由を侵害する重大な危険をもたらすことになります。
教育基本法改悪を許さないたたかいを広げていきましょう。