2006年4月27日(木)「しんぶん赤旗」

主張

チェルノブイリ20年

大事故の国際的教訓を生かせ


 旧ソ連のチェルノブイリ原発4号機(ウクライナ共和国)で史上最悪の原発事故が起こってから、二十六日で二十年がたちました。

 チェルノブイリの事故は、原子炉が暴走して炉心溶融をおこし、原子炉内の放射性物質が大量に放出される大爆発を起こしたものです。放射能が多くの国々に届くなど、地球規模の環境汚染をもたらし、世界的な大問題になりました。

 この大事故からの教訓をどういかしているかが、いま改めて問われています。

安全神話の一掃を

 事故の原因は、実用炉で出力制御などの実験という危険なことを行い、安全装置の解除などが重なって原子炉が暴走したことによるとされています。背景には、当時の旧ソ連で「原発はサモワール(湯沸かし器)と同じくらい安全だ」といった「安全神話」がありました。

 事故によって作業員など三十一人が死亡し、三十三万人以上の住民が避難・移住を余儀なくされ、その後も数十万人が放射線障害に苦しんでいます。いまでも三十キロメートル圏内は立ち入りが制限され、広範囲にひろがった低濃度の汚染地域にウクライナ、べラルーシ、ロシアの三カ国で五百万人以上が住んでいます。

 放射能汚染は欧州諸国に広がり、各地で、食料品、飲料水、牛乳などの摂取制限、野菜、肉の市場出荷制限が行われました。放出された放射性物質は日本でも観測されました。

 この事故から世界の各国が学んだ最大の教訓は、“原発は安全”という「安全神話」を一掃することです。これは、一九七九年の米・スリーマイル島原発の炉心溶融事故の教訓でもありました。

 イタリアでは原発を閉鎖し、スウェーデン、ドイツでは段階的閉鎖に踏み出しました。

 国際原子力機関は一九八八年、チェルノブイリ原発事故などの教訓にもとづいて、「原子力発電所の基本安全原則」をとりまとめました。

 原子力の安全に絶対はないこと、大量の放射性物質が放出されるような事故(過酷事故)が起きうることを前提に、安全対策、防災対策を強化すること、原子力分野の安全規制に責任を持つ独立した規制機関を確立することなどが勧告されています。

 これらは、日本も批准した原子力安全条約(九六年発効)に反映され、欧米諸国では実施されてきました。

 私たちにとって最大の問題は、日本政府が、これらの国際的教訓を無視してきたことです。過酷事故は「工学的には現実に起こるとは考えられない」として、安全審査の対象外とされています。安全規制を担うはずの原子力安全・保安院は、経済産業省という原発推進行政の内部組織でしかありません。

 日本の原子力行政は、世界から見て大きく立ち遅れているのです。

原子力行政の抜本改革

 日本は世界でも有数の地震国です。三月の金沢地裁判決は、耐震審査指針の不備等を指摘し、過酷事故により住民が被曝(ひばく)する可能性があるとして、志賀原発2号機の運転停止を命じました。過酷事故は「起こりうる」として対処しなければ、国民に安全を保障できません。

 福島県をはじめ原発立地自治体から、独立した規制機関を確立すべきだとの意見が出されています。

 原発の危険から国民の安全を守るためには、チェルノブイリ事故からの国際的な教訓を生かして「安全神話」を一掃し、原子力行政を抜本的に改革することが必要です。


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