
2006年4月24日(月)「しんぶん赤旗」
社会リポート
静岡・西豆(さいず)汚泥処理施設入札
低価格の2社排除
公取委が関心 落札額つり上がる
“談合の疑い 解明必要”
自治体や広域行政組合が発注する汚泥・し尿処理施設建設をめぐる大手プラントメーカーの談合疑惑が全国に広がり、大阪地検特捜部が強制捜査に乗り出しました。静岡県では、隣町の直前の衛生プラント入札で低価格の応札をした2社を排除して入札を行い、落札価格がつりあがったという事態が大きな話題となっています。(藤沢忠明)
問題になっているのは、静岡県の伊豆西海岸の三町村(合併して現在は松崎町、西伊豆町の二町)でつくる「西豆(さいず)衛生プラント組合」が、松崎町江奈地区に建設中の「し尿・浄化槽汚泥高度処理施設」(処理量一日あたり四十四キロリットル)です。
同工事は昨年二月二十八日、入札に参加する企業を発注側があらかじめ指名する指名競争入札で行われました。大阪府阪南市の汚水処理施設建設で家宅捜索された荏原製作所、クボタなど九社が参加、JFEエンジニアリングが十五億円で落札しました。落札率(予定価格に対する落札額の割合)は93%の高率でした。
同組合が事前に工事費の概算見積もりを提出させた十一社のうち二社を指名せず排除して、残りの九社で入札を行ったのです。
排除されたのは、「西豆」の入札があった六カ月前、同県下田市と南伊豆町でつくる「南豆(なんず)衛生プラント組合」の「汚泥再生処理センター」(一日あたり処理量四十三キロリットル)を十三億一千四十万円で落札した三機工業と、十二億八千七百万円という最低額で応札し、「失格」となった日立造船の二社です。
大手プラント業界の談合組織の幹事役と指摘されている住友重機械工業は、最高の十八億六千万円で入札しました。一方、落札した三機工業と失格した日立造船の二社の入札額は、これより五億円以上も低いものでした。「南豆」の入札に参加した十一社は「西豆」の見積もりを提出した十一社とまったく同じ顔ぶれです。(表参照)
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2億円もの違い
「南豆の入札で低い札を出した三機工業と日立造船の二社を、西豆の入札で除外したのは、落札価格のつりあげをねらった談合では…。行政が関与した疑いも強い」というのは、日本共産党の鈴木源一郎・松崎町議。実際、「西豆」と「南豆」の施設の処理量はほとんど変わらないのに、「西豆」の建設費は二億円近くも高くなっています。
「西豆」の入札の二週間ほど前、談合情報を記した入札の中止や事業の見直しを求める文書がいくつも出まわりました。このため、入札を前に、西豆衛生プラント組合は臨時のプラント議会全員協議会を開き、事務局が二社を除外した理由を釈明。入札は予定どおり九社で行いました。その後、当局は「見積もりの依頼と指名とは全く別問題。技術的適性や工事実績などで業者を指名した」などと説明しています。
しかし、三機工業、日立造船とも二〇〇一年度以降、二件の受注実績があります。
ことし三月末の松崎町議会で、深沢進町長は、昨年九月、公正取引委員会に「西豆」の入札に関する書類を全部、送ったことを明らかにしました。公取委は、二社が指名から排除されたことに関心を持っているといいます。
二社が排除されたことについて、ある企業関係者は、「談合に加わらなかったからでしょう。これ以外にないですよ」といいます。
議事録公表せず
前出の鈴木町議は「二社を排除し、九社を選定したときの議事録を公表せよ、と迫っていますが、町当局は公表していません。財政危機を理由に、幼稚園の職員を減らしたり、介護保険料の値上げなど町民に犠牲を強いながら、こんな無駄遣いの談合疑惑の放置は許されない。公取委は徹底糾明すべきだ」と話しています。