2006年4月24日(月)「しんぶん赤旗」
与党議員も危ぐ 療養病床削減
医療改悪法案で患者追い出し
厚労省も「受け皿ない」
医療改悪法案の国会審議で、療養病床の大幅削減が大きな問題になっています。日本共産党の高橋千鶴子議員が二十一日の衆院厚生労働委員会で「患者の追い出しになる」と追及。与党議員の質問でも「関係者から不安が出ている」と危ぐの声が上がりました。
療養病床は慢性的な症状などで患者が長期に入院する施設です。現在、医療保険が適用される「医療型」が二十三万床、介護保険が適用される「介護保険型」が十五万床、計三十八万床あります。改悪案では、二〇一二年三月末までに「介護型」は全廃、「医療型」も十五万床へと大幅に減らします。現在の六割にあたる二十三万床を六年間でなくす計画です。
政府は削減の理由として、「療養病床は、医療必要度の高い患者を対象とする」ことをあげます。削減数の根拠にしているのが、「慢性期入院医療実態調査」(昨年十一月、中央社会保険医療協議会提出資料)です。そこでは、「療養病床の入院患者のうち医師の対応がほとんど必要ない人が概ね五割」という数字をはじき出しました。削減の「受け皿」は、老人保健施設、有料老人ホームなどになるとしています。
これは実態を無視した議論です。高橋議員は二十一日の質問で、ある病院長が「(容体は)安定はしていても常に医療を必要としている患者は大勢います。老人保健施設を併設していますが、老健には移せず、家に帰ることができない患者のため、赤字を覚悟で診療を続けるつもりです。病床は満床で減少はできません」と訴えていることを紹介。療養病床削減の中止を求めました。
削減方針は昨年十二月下旬、厚労省が突然打ち出しました。医療改悪法案の骨格を定めた十二月一日の政府・与党「医療制度改革大綱」にも盛り込まれていませんでした。
「全くその経過も知らないし、説明も受けていなかった。国会、厚生労働委員会、いろいろな部会も含めて聞いたことがなかった」(自民党の清水鴻一郎議員、十二日の衆院厚労委員会)という声が上がるほどです。
療養病床の削減方針の先取りともいえることが、すでに二〇〇六年度の診療報酬改定で具体化されました。
療養病棟の入院基本料の区分に、「医療の必要性が比較的低い」とする「医療区分1」を新設。診療報酬の点数を大幅に引き下げました(今年七月実施予定)。「医療区分1」の患者を入院させると採算が取れなくなり、病院からの「追い出し」につながる仕組みです。
全日本民医連は「療養病床を持つ病院では、大幅なマイナス収入となる試算もある。地域の第一線で医療を担っている多くの病院経営に大打撃になる」と批判。診療報酬改定の七月実施の中止を強く求めています。
厚労省は、「療養病床入院患者の受け皿が、いまあるとは思われない」と認めています。療養病床の大削減は、特別養護老人ホームの待機者が三十八万五千人を突破する深刻な事態にいっそう拍車をかけるものです。(山岸嘉昭)
全国の病院から不安の声
民医連アンケート全日本民医連は、全国の約九千の病院に、療養病床削減反対についてのアンケートと要望書を送付しました。各病院から不安、懸念の声が寄せられています。その一部を紹介します。
「国のやっていることは思いつき、行き当たりばったりだ。一般病床から資金をかけて転換し、戻さない念書も取っているのに詐欺的で、犯罪行為に等しい」(秋田県)
「当院は全床療養病床です。医療区分1の方でリハビリや入院の継続が必要な方は多くいます。各病院で患者の振り分けが起こり、療養難民が多く発生すると考えます」(愛知県)
「団塊の世代が高齢化する時期に療養病床を削減していくと介護難民のゆくところはなく、少子化で介護する人もなく極めて悲惨なことになるのは火を見るより明らかである」(兵庫県)
「地方で介護病床から追い出された人々はどこへ移動するのか。急に計画性もなく在宅へ向けても在宅でみる人はいません」(広島県)