2006年4月19日(水)「しんぶん赤旗」
貸金業制度
灰色金利 撤廃へ
金融庁懇談会 引き下げでほぼ一致
金融庁の「貸金業制度等に関する懇談会」は十八日の会合で、利息制限法の上限金利(年15―20%)と刑罰がある出資法の上限金利(年29・2%)の間の「グレーゾーン(灰色)金利」を撤廃することで一致し、出資法上限金利を利息制限法の上限まで引き下げることでもおおむね一致しました。二十一日に開く懇談会で中間整理としてとりまとめます。
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サラ金など貸金業のほとんどは現在、罰則がないからと、利息制限法を超える「灰色金利」で貸し付けをしており、多重債務・高金利被害の解決に向け、大きな一歩が踏み出されたといえます。
十八日の懇談会には、これまでの議論を踏まえた中間整理案が提示されました。整理案は、出資法の上限金利について(1)借り手の返済能力に対して利率が高く、多重債務の一因となっている(2)貸金業者の資金調達コストに比べて高い――ことなどから、利息制限法の水準まで引き下げる方向で検討すべきだとの「意見が多く示された」と記載。しかし、▽利息制限法金利を上げて出資法金利に合わせる▽中間的な金利に一本化する、との案も併記していました。
この整理案に対して、懇談会委員の有識者から異論が続出。「灰色金利の廃止は一致している。利息制限法まで引き下げるのが、(灰色金利を貸金業者に認めなかった)最高裁判決を受けた行政の判断であるはずだ」「金利を上げろとの意見が委員から出た記憶はない。貸金業者の要望を入れれば両論併記になるが、報告書には委員がどう考えるかを明確に出すべきだ」などの意見が出されました。
このため、中間整理案は了承されませんでした。
オブザーバーとして出席しているサラ金大手「アコム」の木下盛好社長ら業界側から、規制強化や金利引き下げへの反対意見が出ましたが、金融庁の後藤田正純政務官が「グレーゾーンを撤廃し、利息制限法で合わせることで一致したといっても過言ではない」とのべ、出資法金利を引き下げる方向で中間整理案をつくり直すことを表明しました。ただ、少額・短期の融資には例外を設ける可能性も残しました。
解説
多重債務社会正す一歩
「多重債務社会」の是正へ、当然の一歩がようやく踏み出されました。
出資法上限金利の年29・2%でサラ金に二百万円を貸し付けられると、一年間に払う利息は五十八万四千円。毎月約五万円にのぼります。サラ金は大銀行グループなどから1%台の金利で資金調達しており、貸せば貸すほどもうかるため過剰融資に走ります。
高金利に、借り手の返済能力を無視した過剰融資が加わり、多重債務者二百万人、自己破産約二十万件、経済・生活苦での自殺者約八千人という多重債務社会が生まれました。
しかし、サラ金大手など貸金業界は、「金利を下げればヤミ金が跋扈(ばっこ)する」と、多重債務・ヤミ金被害の実態を無視した議論をふりまき、さらには「金利は自由化すべきだ」とさえ主張しました。自民党の一部国会議員はパーティー券代を受け取り、業界に同調する主張を展開しました。
日本共産党はいっかんして、異常な高金利である出資法上限金利をまず利息制限法まで引き下げることを求め、「しんぶん赤旗」は、武富士、アイフルの問題やサラ金被害、貸金業界の政界工作の暴露などの報道を続け、高金利引き下げこそが多重債務社会の解決のカギだと指摘してきました。
世論をさらに大きくして、ようやく打ち出された金利引き下げの流れを早急に、確実に実現することが求められています。(井上 歩)