2006年4月18日(火)「しんぶん赤旗」
「海上限定」保証なし
沖縄新基地 ヘリ飛行経路
普天間では全市域
本紙入手 米軍文書でも明白
政府と島袋吉和名護市長が合意した米海兵隊普天間基地に代わる辺野古沿岸につくる巨大な新基地。米軍ヘリの飛行は「海上」に限定され、西側の辺野古などの民間集落の上空飛行を「回避する方向で対応する」との合意がまったく根拠のないカラ約束となる可能性が十七日までに、本紙の入手した米軍文書でわかりました。
米軍文書は、海兵隊普天間基地司令部が米軍ヘリの飛行ルートを基地西側にも設定するために作成した関連文書の一部。日本の都市計画図に書きこんだもので、一九九六年七月十日に宜野湾市に通知しました。
文書には米軍ヘリなどの離着陸や旋回飛行訓練の経路(場周経路)が示されています。
米軍は同基地の場周経路図を公表していません。米軍の手による普天間基地の事実上の「場周経路」文書が明らかになったのは初めてです。
従来の飛行ルートを黄色線で描き、西側の新ルートを赤い線で明示。そこにはヘリを示す「HELO」、東側ルートの二重円の外円部にはKC130空中給油機などの固定翼機をさす「FIXED WING」などが手書き文字で記入されています。
当時、この変更案に桃原正賢市長は「全市の上空が訓練空域になりかねない」と拒否しました。
米軍は同市の拒否を無視、西側での訓練飛行を強行したばかりか、東側など全市の上空で危険な旋回飛行訓練を開始。その結果、爆音被害は際限なく拡大されています。
「場周経路」を沿岸案に重ねると辺野古周辺は旋回飛行経路になります。米軍再編は「能力の向上、訓練の維持・拡大」を明記しています。
宜野湾市よりも人口密度の低い辺野古での訓練は拡大・強化こそされ、縮小は想定されません。
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解説
沿岸案は「危険の移設」
本紙が入手した同基地の「場周経路」文書は、移設後の訓練を大幅に変更・縮小することを米軍が確約しないかぎり、辺野古沿岸につくる新基地でどんな訓練飛行が行われるのかを極めてわかりやすく示しています。
同文書が出された背景も特徴的です。文書が出される直前の一九九六年三月、日米間で普天間基地の「騒音防止協定」が締結されました。同基地での飛行について人口密集地、夜間や学校、病院など公共施設の上空の飛行を避けるようにするという内容でした。
場周経路文書には学校や病院の所在を特別に明記するなど協定を「意識」したものになっています。しかし実際には、人口密集市街地の上空で平然と飛行訓練を開始。以来、二機から四機の編隊による危険な旋回飛行が昼夜の区別なく繰り返されているのです。沖縄国際大学への大型ヘリ墜落事故はそうした中で起きました。
辺野古沿岸案は「危険の移設」です。普天間基地問題の解決は「県内移設ではなく早期閉鎖と全面返還」(伊波洋一宜野湾市長)しかありません。(山本眞直)