2006年4月17日(月)「しんぶん赤旗」

スズメ謎の大量死 北海道で約900羽

英は25年間に9割激減

道庁、解明へ調査乗り出す


 身近な野鳥のスズメが北海道旭川市などで大量死しているのは、自然環境におこった異変のサインなのか――。この冬、住民からの通報でスズメの死がいが北海道で多数見つかり、北海道庁は原因解明の調査に乗り出しました。 (宇野龍彦)


 北海道の集計によると、通報・相談は昨年十二月末から十一日までに道内十七市町で百五件。いまのところ鳥インフルエンザウイルスなども検出されておらず、専門家も原因が思い当たらないと首をかしげています。

繁殖率は高く

 日本野鳥の会札幌支部事務局の住友順子さんは「ことし一月末ごろから、スズメを見かけない、なぜだろうという、市民の問い合わせが寄せられるようになった。昨年の春から夏にかけて気温が高く繁殖率が高かったので、スズメの数はふえていたはず」といいます。

 北海道の十一日までの中間まとめによると、スズメの死がいは旭川市内で四百九十三羽、札幌市内で百九十羽、富良野市、石狩市、苫前町でそれぞれ十五羽など十一市町で七百六十二羽にも。北海道自然環境課は「現在全道からスズメの大量死の情報を集めている。十一日の集計後も、通報は増え十三日までの電話による情報で約九百羽に増えた」と話します。

 住民からの通報を受けた上川支庁では五日、旭川市で回収したスズメの死がいを酪農学園大学の浅川満彦教授(寄生虫学)に送り、死因などの病理分析を依頼しました。その結果は「栄養状態、内臓は正常。鳥インフルエンザ、その他の感染や出血などは認められず、死因は不明」。北海道大学大学院獣医学研究科の病理検査でも「とくに病変は認められず、死亡原因は不明」でした。

 旭川市では二〇〇三年、旭山動物園で保護していたスズメ十三羽が数日間で全滅したことがあり、死因を調べた結果、国内で初めての寄生虫のアトキソプラズマに感染が原因とわかりました。しかし、今回の大量死が、寄生虫のアトキソプラズマによるものとは確認されていません。

 日本野鳥の会自然保護室は「国内で今回のようなスズメの大量死は聞いたことがない。原因に心当たりがない」といいます。

都内ではハト

 都市鳥研究会の川内博事務局長も「若い鳥が台風だとか大雨で死んだ例はあるが、これほど大量にスズメの死があちこちでおこる実例は国内で聞いたことがない」と首をかしげます。

 昨年八月、神奈川県横須賀市の小学校の中庭で、台風通過のあとで二本のけやきの大木の下に約百五十羽のスズメの死がいが見つかった例があり、その原因もよくわかっていません。

 海外の例では、英国で五年間でスズメが半減し、英国全体で過去二十五年間に九割も減少していることが問題になったことがあります。英国政府は「人里を好むスズメが消えたのは、人間にとってよくない環境変化が進んでいる兆候」だとして原因究明に乗り出しましたが、まだ不明だといいます。

 環境省野生生物課は「全国的にスズメの大量死の情報はつかんでいないが、東京都内の都立公園でもハト二十九羽が死んでいるのがみつかっている。その原因はわかっていない」といいます。

 川内事務局長は「報道の範囲でしか情報がないが、英国のように大量死の原因が不明だというのは怖いことで、スズメの大量死の原因をきちっと調べておく必要がある」と話します。

 北海道自然環境課は「野鳥の死がいがあってもただちに感染症を疑う必要はないが、ノミや雑菌がついている可能性があり、素手で触れないようにして、近くの支庁の自然環境係に連絡してほしい」と話しています。


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