2006年4月17日(月)「しんぶん赤旗」
列島だより
子育て支援に力
子どもを産み、育てられる環境づくりは日本の未来にかかわる大きな課題です。福島県矢祭(やまつり)町と東京都港区の子育て支援の取り組みを紹介します。
赤ちゃん誕生応援、保育料下げ
福島・矢祭町
子どもの声が聞こえる町に
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福島県矢祭町は、「元気な子どもの声が聞こえる町づくり」を郷土づくりの基本方向に掲げています。その施策のひとつとして、昨年四月施行の「矢祭町すこやか赤ちゃん誕生祝い金等条例」で祝い金・健全育成奨励金百万円を三人目の子に贈っています。今年一月一日からは、四人目に百五十万円、五人目に二百万円を贈るようにしました。
まだ四人目の誕生はありませんが、第三子誕生で祝い金を受けた母親は、お礼の言葉をのべ、「教育費がかかるので、そのために貯金」と町広報誌(昨年七月)に声を寄せています。
「妊産婦健診料助成事業」として妊娠前期、妊娠後期の妊婦一般健康診査に加え妊娠中および産後一カ月までの妊産婦健診費用のうち一回三千円を上限にする助成を四月から実施しています。保育所利用料も下げました。
全国に先駆けて二〇〇一年に「合併しない宣言」をした町として、減る一方の人口を増やすのが大きな課題です。合計特殊出生率は二〇〇四年度で一・九四でしたが、現在の人口を維持するには二・〇八が必要といわれています。人口は四月一日現在六千九百六十五人です。かつては約一万二千人でした。
町の高信栄一健康福祉課長は「人口を増やすためには、子どもを産んで育てられる環境づくりなど支援が必要です。赤ちゃんの誕生を応援する、子育てにかかる負担の軽減、企業誘致などによる働ける場の確保のために施策をすすめています」とのべています。
自治体では限界 国も施策もっと住民の暮らしを守り豊かにするため活動してきた日本共産党の圷(あくつ)豊明町議は「人口減少は町をさびしくします。合併しないで自立した町づくりのためには住民の負担を軽減し、人口を増やすことが重要です。子育て支援、自治体の努力は必要ですが、限界があります。もっと国が、安心して子育てのできる施策をすべきです」と話しています。
(栗山正隆)
矢祭町自治基本条例から
第1章 目標
(適正規模の共同社会)
第1条 矢祭町は、わが国が歴史始まって以来の人口減少を迎える中でも、自立するためのあらゆる施策を講じ、人口減少に歯止めをかけ、適正規模の共同社会を目指す。
(郷土づくりの基本方向)
第2条 子どもは町の宝、国の宝。矢祭町は、恵まれた自然環境の中で、夢をもって子育て・子育ちができる、「元気な子どもの声が聞こえる町づくり」に努める。
第3条 矢祭町の青年・壮年の世代は、子や孫達の健やかな成長を願うとともに、社会のために尽くしてきたお年寄りが、尊敬され、大事にされ、安心して生きていける町づくりに努める。
中3までの医療費無料に
東京・港区
合計特殊出生率04年0.78に二〇〇〇年〇・八五、〇四年〇・七八、これは港区の合計特殊出生率です。〇四年の全国の特殊出生率が一・二九、東京都が一・〇一ですから、港区はきわめて低くなっています。
少子化対策は一自治体だけではなかなか難しい問題ですが、日本共産党港区議団は、多くの自治体が、子育て世代への支援策を充実させることで国を動かす力になると、さまざまな提案を行い、充実させてきました。
多くの子育て世代から歓迎されているのが、中学三年生までの医療費無料制度(通院、入院医療費、入院給食費含む)です。この制度は〇五年四月から実施しています。
日本共産党区議団は、乳幼児の医療費無料制度の発足から、対象年齢の拡大に一貫して取り組んできました。〇四年一月の議会(臨時議会)に、他の会派にも呼びかけて「小学六年生まで医療費を無料にする」条例提案を行いました。これらを受けて行政が〇四年第一回定例会に「小学生の入院費まで無料にする条例」を提出。その審議の中で、党委員(議員)の提案もあり、「早い時期に体制を整え、子ども医療費助成制度の拡充を図ること」との付帯意見が付けられ、中学生までの医療費無料化(窓口負担なし)につながりました。こどもの医療費無料化の拡大に取り組んできた新日本婦人の会港支部の会員の間では、拍手と歓声が上がったとのことです。
これ以外にも党区議団は、「出産祝い金」条例や「小中学校の卒業アルバム作製費の助成」条例等、条例提案を他会派にも呼びかけ、住民要望の実現にがんばっています。「出産祝い金」条例は、今年度からの出産費用の助成事業(五十万円を限度に出産費用から健康保険組合等の出産育児一時金との差額を助成)、「卒業アルバム作製費への助成」条例は「学習活動支援保護者負担軽減事業」(補助教材の充実、社会科見学や体験学習、卒業アルバムなどへの支援で保護者の負担軽減を図る。六千万円)という形で実現しています。
党区議団提案で一時保育制度もまた港区では、党区議団の提案で、議会の傍聴、審議会への参加、各種説明会の間、こどもを預かる一時保育制度がはじまりました。
子育て中の若いお母さん方が、区議会に「幼稚園をなくさないで」「福祉会館などを親子で使えるように」等の請願を提出し、議会で請願の趣旨説明や傍聴をしてきました。しかし保育体制がないため、こどもが「ぐずる」と席を離れたり、交代で面倒を見たり、保育してくれる人を確保しないと参加できません。党区議団は、こうした実態を紹介し、子育て中の方も積極的に区政に参加することを保障するため、提案していたものです。
(日本共産党港区議・熊田ちづ子)
合計特殊出生率 一人の女性が平均何人の子どもを産むかを示した数値。厚生労働省の人口動態統計資料によると、「十五―四十九歳までの女子の年齢別出生率を合計したもの」とのべています。
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日本共産党第二十四回大会決議から「子育て環境の改善」(要旨) 安心して子どもを産み、育てることのできる社会をつくることは、日本国民の未来にかかわる大問題である。わが党は、長時間労働をなくし家庭生活との両立ができる人間らしい労働をとりもどすこと、男女差別・格差をなくし女性が働きつづけられる社会をきずくこと、保育所や学童保育など子育て条件改善にとりくむこと、子どもの医療費無料化を拡充すること、若者に安定した仕事を確保することなど、子育て環境の抜本的改善をはかる運動を大いに発展させるために、力をつくすものである。