2006年4月15日(土)「しんぶん赤旗」
大阪高裁
介護者の遠隔配転無効
2労働者勝利判決 “ネスレは命令権乱用”
大手食品メーカー、ネスレ日本の姫路工場の労働者が、家族を介護しなければならない事情を無視した遠隔地配転の撤回を求めていた裁判の判決が十四日あり、大阪高裁は、会社側の控訴を棄却しました。昨年五月の一審判決に続き、労働者の全面勝利となりました。
ネスレは二〇〇三年五月、姫路工場のギフトボックス職場の閉鎖を発表。六十人の労働者に茨城県霞ケ浦工場への配転か退職かを迫り、四十九人が退職、九人が配転に応じました。五十六歳の男性は病気の妻を介護し、五十歳の男性も母親を介護していたため、退職はもちろん、配転にも応じませんでしたが、会社は霞ケ浦工場への配転を命令。二人は、姫路工場への立ち入りを認められなくなり、同年十一月、神戸地裁姫路支部に提訴しました。
一審判決は「配転命令によって受ける不利益が通常甘受すべき程度を著しく超える」「配転命令権の乱用」と会社側を断罪し、配転命令は無効としました。
今回の控訴審判決は、一審判決を踏襲し、あらためて配転命令は無効とするとともに、会社側が、経営に責任を持たない裁判所が判断すること自体失当だと主張したことについて、「経営権への干渉であるかのようにいう方が失当というべき」だと、さらに厳しく批判しました。
判決を受けて、五十六歳の男性は「ほっとしました。家族と子どもが心配していたので、喜んでくれると思う。同じような立場の人に希望を与える判決だと思います」と話しました。
五十歳の男性は「母は三月三十一日に亡くなりました。介護ができることを裁判所に認めてもらったと、母に報告したい」と語りました。